Archive for May, 2015

人工知能スピーカー「Echo」を使うと、Amazonのロボット戦略が見える

Friday, May 29th, 2015

家に「Amazon Echo」が来た。Amazon Echoは人工知能を搭載したスピーカーで、話しかけて操作する。質問すると人間の秘書のように音声で回答する。Apple Siriと同じだと思っていたが、使ってみるとAmazon Echoはロボットのような存在感がある。Amazon Echoをロボットの原型と解釈しても違和感はない。

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音声で呼びかけて使用

Amazon Echoは2014年11月に発表され、2015年4月から出荷が始まった。筆者宅にもAmazon Echoが届き、毎日の生活で活躍している。Amazon Echoは7台のマイクを搭載しており、周囲の音声に敏感に応答する。リビングルームに置いているが (上の写真)、キッチンから呼びかけても応えてくれる。「お〜いお茶」の感覚で、今いる場所から声をかけて、音楽やラジオを操作する。音楽再生中でも、ノイズ・キャンセレーション機能があるので、Amazon Echoは指示を聞くことができる。スピーカー二基が下向けに搭載され、360度の方向に音が出て、部屋全体に音楽が届く仕組みになっている。

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音楽を再生する

Amazon Echoを使う時は「Alexa」と語りかける。これが指示を出すときの合言葉で、Amazon Echoはずっと周囲の音声を聞いているが、このキーワードを聞くと目覚める。音楽を聞くときは「Alexa, play some Prime Music」と指示する。Amazonの音楽ストリーミングサービス「Prime Music」から音楽が流れる。曲名はAmazon Echoが選択する。特定のアーティストの曲を聞きたい時は、「Alexa, play ○○○○」と指示する。

Amazon Echoの動きについては専用アプリ「Echo」で確認できる (上の写真、以下同様)。左側は再生している曲を示し、右側はAmazon Echoが聞いた言葉を表示している。指示したことが正しく伝わっているかを確認できる。また、それをフィードバックすることで、Amazon Echoは結果を学習し、音声認識の精度が上がる。音声コマンドの部分はほぼ100%完全に聞き取る。一方、曲名や固有名詞や長い文章では間違いもあり、まだ学習中との印象を受ける。

音楽再生中も音声で操作できる。「Alexa, turn it up」と指示すると、ボリュームを上げる。「Alexa, next」と指示すると、次の曲にジャンプする。「Alexa, add this to my library」と指示すると、気になる音楽を自分のライブラリーに追加できる。Amazon Echoのなかで音楽再生機能が一番充実しており、頻繁に利用している。

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インターネットラジオを楽しめる

Amazon EchoはPrime Musicの他に他社ストリーミングサービスにも対応している。音楽では一番人気の「Pandora」を、インターネットラジオでは定番の「iHeartRadio」と「TuneIn」に対応している。操作は同じで、「Alexa, play Pandora」と指示すると、Pandoraから音楽を再生する (上の写真、左側)。インターネットラジオを聞きたい時は「Alexa, play radio」と指示する。そうするとAmazon Echoは放送局の名前を尋ねるので、希望のステーションを指示する。例えば「KGO」と答えると、サンフランシスコのラジオ局KGOをライブでストリーミングする (上の写真右側)。Amazon Echoと対話しながらラジオ局を選択でき、人と会話している雰囲気を味わえる。

質問の意図を解釈する

スマホではSiriなどのパーソナルアシスタントが人気だが、Amazon Echoも質問の意味を理解して回答する。例えば、「Alexa, what’s the weather」と尋ねると、現在地の今の天気を答える。Siriで話題となった質問形式に「Alexa, do I need an umbrella tomorrow」がある。遠回しに質問しても、これは天気に関する質問だと解釈し、明日の天気予報を回答する。しかし、「Alexa, do I need a jacket tomorrow」では質問の意図を把握できなくて、Amazon Echoは「I couldn’t find the answer」と回答し、Bing検索エンジンへのリンクが示される。因みにSiriに同じ質問をすると、明日の天気と気温を答える。Siriが先行しているが、Amazon Echoは学習を重ねこれを追っている。

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ちょっとした質問に的確に回答

Amazon Echoは情報検索端末として利用できる。聞きたいことを質問すると、Amazon Echoが回答を探して答える。「Alexa, how tall is the Space Needle?」と質問すると、シアトルのスペースニードルの高さは604フィート (184メートル) と回答する (上の写真、左側)。しかし、「Alexa, how tall is Tokyo Skytree?」と質問するが、東京スカイツリーの情報は持ち合わせていない。専用アプリには写真が表示され (上の写真、右側)、まだ準備中であることを示唆している。単語の意味が分からない時は、「Alexa, what’s the definition of ○○○○?」と尋ねる。Wikipediaを指示すると、Amazon Echoはそこから情報を検索し、冒頭部分を読み上げる。スマホと異なりAmazon Echoでは、質問した本人だけでなく周囲の人も回答を聞けるので、人間側も効率的に学習できる。

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Amazon Echoから直接買い物をする

AmazonはEchoをオンラインショッピングのチャネルとして位置づけている。音声で備忘録を作製できる機能があり、これをショッピングリストとして買い物をする。「Alexa, add strawberries to my shopping list」と指示すると、イチゴをショッピングリストに追加する。追加された項目は専用アプリで閲覧でき (上の写真、左側)、店舗ではこれを見ながら買い物をする。また、「Search Amazon」という項目にタッチすると、今度はAmazonオンラインサイトで買い物ができる (上の写真、右側)。

Amazonサイトでは音声で買い物をして、チェックアウト処理までできる。例えば、「Alexa, re-order laundry detergent」と指示すると、前回購入した洗濯用洗剤を購入できる。送付先と支払い方式は前回と同じ条件が適用され、商品が自宅に配送される。再注文に限られるが、音声でショッピングができるのは極めて便利。家庭用ロボットの開発で、日用雑貨や生鮮食料品などの買い物を、ロボットに音声で指示する方式が注目されている。Amazon Echoは、家庭にロボットが入ってきた状況を先取りしているとも解釈できる。

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スマートホームのハブとなる

Amazon Echoはスマートホームのハブとしても機能する。スマート家電「WeMo (コンセント)」と「Philips Hue (LEDライト)」に対応し (上の写真)、Amazon Echoに音声で語りかけて操作する。朝起きると、ベッドの中からAmazon Echoに指示し、コーヒーメーカーのスイッチをオンにする。ソファーに座ってテレビを見る時は、Amazon Echoに部屋のライトを暗くするよう指示できる。Amazon EchoをInternet of Thingsのハブとして利用する方法が注目されている。両製品に留まらず、Amazon Echo対応スマート家電が数多く登場すると期待されている。

Amazon Echoはロボットのプロトタイプ?

Amazon Echoのインターフェイスは自然言語で、これを支える人工知能が製品の成否を握る。Amazonは自然言語処理ではやや出遅れた感があるが、「Evi」という英国企業を買収しこの基礎技術を手にした。Eviは知識ベースとセマンティック検索技術を開発し、これをAmazon Echoで展開している。

Amazon Echoを使ってみると、Siriとは根本的に異なるコンセプトであることを実感する。Siriは一人で利用することが前提であるが、Amazon Echoは家族全員が共同で利用する。Amazon Echoは動かないが、インテリジェントなロボットに接している感じがする。Amazonはロボット開発について何も表明していないが、Echoがインターフェイスのベースとなるのかもしれない。

Google自動車最新モデルがデビュー、シリコンバレー市街地を試験走行

Thursday, May 21st, 2015

Googleは一年前、自動運転車の最新モデル「Prototype」を公開した。Googleは今月、Prototypeをシリコンバレーの公道で試験する計画を表明。Prototypeの安全性を確認するだけでなく、地域住民が自動運転車に対しどう反応するかも検証する。更に、自動運転車を公共交通のインフラとして利用する方式も検討する。Prototypeが最終製品の形で、自動運転車の開発は大詰めを迎えた。

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Prototypeを公道で試験

Prototypeは軽自動車を半円形にした車体に自動運転技術を搭載している (上の写真) 。二人乗りで、車内にはハンドル、アクセル、ブレーキペダルは無い。完全自動運転ができるデザインで、搭乗者はスタートボタンを押すだけでクルマが走り出す。GoogleはPrototypeをシリコンバレーのMountain Viewで試験する。試験中は無人で走行する訳ではなく、二人のドライバーが搭乗する。問題が発生するとドライバーがクルマを制御する。試験用車両は、ハンドル、アクセル、ブレーキを設置している。これらはカリフォルニア州の道路交通法により義務付けられている。更に、最高速度は時速25マイル (時速40キロ) に抑えられている。

試験の目的は住民の反応を理解すること

Prototypeを市街地で試験する目的は、地域住民が自動運転車にどう反応するかを検証すること。米国社会では自動運転車を歓迎する機運が高まっているが、同時に無人のクルマが街中を走行することに対する懸念も示されている。横断歩道を渡る時、自動運転車はちゃんと停止するのか、不安の声も聞かれる。Prototypeが地域社会に受け入れられるのかが最大の課題となる。

技術的には自動運転車に特有な問題を見つけることを目指している。例えば、目的地まで走行したらその場所が工事中であった場合、どこに停車すべきなどを検証する。タクシーだとドライバーが乗客と言葉を交わし、便利な場所に停める。搭乗者はPrototypeに降車場所をどう指示するのか、ヒトとクルマのインターフェイスが重要な研究テーマとなる。

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最新モデルをビデオで公開

GoogleはPrototype走行試験の模様をYouTubeで公開した。また米国の大手メディアはこぞってPrototypeについて報道した。これらを統合すると、多くのことが読み取れる。Prototype車内はシンプルで、座席の間に水色のパネルが設置されている (上の写真)。パネルがダッシュボードとなり、ここにスタートボタンが設置されている。奥には緊急停止ボタンが設置されている。その他に、ウインド開閉ボタン、ドアロック、シートウォーマーボタンが設置されている。水色と若葉色の二色のカラーコーディネートが新鮮なイメージを出している。

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屋根の上には回転灯のようなカプセルがあり、ここにLIDAR (レーザー光センサー) を格納している。LIDARはクルマの周囲360度のオブジェクトを高精度で捉える。車体正面の”鼻”の部分にレーダーを搭載している。Prototypeはカメラを搭載し、オブジェクトの形や色を検出する。信号機の色やオレンジ色の道路コーンなどを把握する。上の写真は道路コーンで囲まれたレーンを高速走っている様子で、カメラで捉えたイメージを高速で処理し、正しく認識していることを示している。

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外部企業に製造委託

PrototypeはGoogleが設計し製造する。実際には、Roushという会社に製造を委託している。RoushはLivonia (ミシガン州) に拠点を置く企業で、エンジニアリング・サービスを提供する。自動車の設計やプロトタイプの製造を手掛ける。PrototypeはRoushのデトロイト工場で製造されている。上の写真は製造ラインでPrototypeが組み立てられる様子を示している。パワートレインなど主要部品はBoschから供給を受けている。更に、ブレーキ、タイヤ、インテリアなどの設計は、Continentalから支援を受けている。Googleは今年末までに100台のPrototypeを生産する予定である。

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空軍基地で試験を重ねる

Prototypeは昨年から、使われなくなった空軍基地で試験を重ねてきた。基地には軍施設があり、小さな町となっている。ここで路上で起こる様々な障害を再現し、Prototypeの機能を検証してきた。路上では稀にしか起こらない障害でも、試験場では何回も再現できる。特に、歩行者や自転車への対応が重点的に試験された。歩行者が飛び出してきたときや、自転車が反対車線を走行しているときなど、Prototypeは事故を回避できるかが検証された。

歩行者は傘をさしたり、バランスボールを抱えたり、ヒトとは分かりにくい恰好でクルマの前を横断する (上の写真)。Prototypeはそれらを正しく歩行者と認識できるかも試験された。PrototypeはMachine Learningの手法で学習しており、考えられる全てのケースを示し、教育する必要がある。

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リアルとバーチャルの試験

自転車がクルマの前に飛び出すのは、1000マイル (1600キロメートル) 走るごとに一回起こると言われている。試験場ではこれを再現し、1週間に100回の試験を実施。また、Prototypeをシミュレーションし、仮想で試験する手法も取られた。これらを合計すると、1週間に1万マイル走行分に相当する試験が可能となった。Googleは路上ではLexusベースの自動運転車で学習を続け (上の写真)、試験場では障害を再現しPrototypeで繰り返し試験する。路上や試験場で学習したことは、自動運転ソフトウェアに反映される。改良されたソフトウェアは、PrototypeやLexusにダウンロードされ、Google自動運転車全体が成長する。

自動運転車のビジネスモデルは

Googleは来年から新しい検証プロジェクトを始める。Prototypeをどんな用途に活用できるのか、その応用分野を探る。Googleは自動運転車を無人タクシーとして利用すると噂されている。タクシー会社が自動運転車を運行し、事業を展開する方式である。更に、自動運転車で都市交通のインフラを整備する計画もある。地方政府がバスを運行する代わりに、多数の自動運転車を運行する方法である。バスが乗客を乗せて定められた路線を走る代わりに、利用者は通りを走っている自動運転車を呼び、目的地まで移動する。今はタクシー料金は路線バスより割高であるが、自動運転車になるとこれが逆転するのかもしれない。交通インフラの概念が大きく変わりそうだ。

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GoogleはPrototypeを試験するMountain Viewで、無料バス「Community Shuttle」の運行を始めた (上の写真) 。誰でも無料でバスを利用できる。Googleは地域住民へのサービスと説明し、実際に多くの人が利用している。Googleは既に、路線バスを無人運転車で置き換えるアイディアを描いているのかもしれない。このモデルに備えて、Googleは都市交通の検証を始めたとも解釈できる。Prototype利用方法の検証は来年から始まる。

米国防省のドローン自律航行技術開発が始まる、Google自動運転車の再来!?

Thursday, May 14th, 2015

Google自動運転車の基礎技術は、DARPA (米国国防高等研究計画局) の研究プロジェクトで誕生した。同じことがドローンで起ころうとしている。DARPAはドローン自動航行技術開発に着手し、軍事ミッションで展開する。軍事技術は早晩、民間企業の製品に展開される。

NASA (米国航空宇宙局) はこの事態を想定し、膨大な数のドローンが飛び交う空域を、航空管制する技術を開発している。更に、FAA (米国連邦航空局) は、商用ドローン運行に消極的だったが、一転して、大幅な規制緩和に舵を切った。米国政府が一丸となって、ドローン技術開発に本腰を入れてきた。米国のドローン技術が一気に加速する勢いだ。

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複数のドローンを自律的に飛行させる計画

今年1月、DARPAは複数のドローンを自律的に飛行させる研究に着手した。(米国政府は無人航空機をUnmanned Aerial Vehicle: UAVと呼ぶが、ここではドローンと表記する。) このプロジェクトは共同自律飛行 (Collaborative Autonomy) を目指し、ドローンは高度な自律飛行能力を持ち、他のドローンと連携してミッションを展開する(上の写真)。

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地上では一人のオペレーターが複数のドローンを操作し、諜報活動や軍事攻撃を遂行する。これが画期的な技術であるのは、現行オペレーションと比較すると一目瞭然だ。現在、ドローンは、専任オペレーター (機体操縦担当) とセンサー・オペレーター (カメラなどのセンサー操作担当) がドローンを操作し (上の写真)、多数のアナリストが状況を判断する。このため、多数のドローンを展開することができず、また、流動的に変化する戦況に追随できないという問題がある。

オオカミの群れが共同で獲物を狙う

このプロジェクトは「Collaborative Operations in Denied Environment (CODE) 」と呼ばれ、現行ドローンのソフトウェアやアルゴリズムを改良することで実現する。ドローンは機体の状況や戦況をリアルタイムにモニターし、基地の司令官に次に取るべきアクションを推奨する。司令官はこれを承認・否認するか、または、継続してデータを収集するよう指示できる。共同自律飛行することで、一人のオペレーターが六機以上のドローンを操作する。また、異なる機種のドローンを組み合わせ、共同でミッションを完遂する。オオカミの群れが共同で獲物を狙う作戦を模している。

民間企業との共同研究

プロジェクトではDARPAが選定した企業と共同で開発を進めていく。DARPAはプロジェクト概要を公開し、参加企業を募っている。CODEは軍事目的の技術開発で、DARPAの指揮の元、民間企業が開発することになる。DARPAの開発成果は、多くの場合、民生用に展開されてきた。このケースでも、民間企業がCODEをベースとしたドローンを開発することが予想される。

これはGoogle自動運転車誕生の経緯とよく似ている。DARPAはGulf War (湾岸戦争) を契機に、自動走行するトラックの開発に着手した。トラックで物資を輸送中に、敵の攻撃を受けても、死傷者を出さないためである。この研究をコンペティション形式で実施したのが「DARPA Grand Challenge」で、スタンフォード大学「Stanford Racing」が優勝した。Googleが総責任者Sebastian Thrunとともにチームを買収し、これが現在のGoogle自動運転車につながっている。CODEは”空の自動運転技術”とも解釈でき、高度なドローン自動航行技術の種が蒔かれたことになる。

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ドローン商用運行のヒント

CODEは商用ドローン運行について、多くのヒントを示している。Eコマース配送を目指している「Amazon Prime Air」 (上の写真) は、30分以内で商品を届けるとしている。しかし、一人のオペレーターが一台のドローンを操縦するのでは、大規模な展開は難しい。大量の商品を配送するには、数多くのドローンが必要となり、オペレーターは複数機を操縦することが求められる。また、ドローンで道路や鉄道などのインフラを点検する際も同じである。数百キロメートルを超える範囲を、数多くのドローンで点検する運用方式が求められる。つまり、商用ベースで運用するには、ドローンに高度な自律航行技術や状況判断能力が求められる。CODEで開発されたソフトウェア (詳細は公開されていないが人工知能か) がカギを握ることになる。

NASAは航空管制技術の開発を開始

目の前に低い空域を無数のインテリジェントなドローンが飛行する社会が迫っている。NASAはドローン社会に備え、航空管制技術の開発に乗り出した。カンファレンス「Drones, Data X Conference」で、NASA自律運行プロジェクト「Safe Autonomous System Operations Project」責任者Parimal Kopardekarが、ドローン管制システムの概要を説明した。このシステムは「Unmanned Aerial System Traffic Management (UTM)」 と呼ばれ、低空空域 (2000フィート以下) を有効に活用する研究で、その概要とロードマップが示された。米国においては、ドローンが飛行する低空空域では飛行ルールはなく、ゼロからの開発となる。

商用ドローンを運用するためのインフラ

UTMは商用ドローンを運用するためのインフラとなる。UTMはクラウドベースのアーキテクチャで、ドローンはネットワークに接続され、システムと交信する。交信方式については複数のオプションが示されたが、携帯電話ネットワークを利用する方式の評価が始まっている。ドローンを管制するメカニズムについても説明があった。UTMは、ドローンが航行できる領域を定義し (Geo-Fencing)、ここに道路に相当する空路を設ける。UTMは、ドローンオペレーターに対し、天気情報や強風注意報などを提供する。(ドローンは激しい雨の中や、強い風の中で運行できない。) また、空路上のドローン混雑状況を予測しその対策を取る。具体的には、ドローンが接近しすぎた場合は、間隔を広げるなどの措置を講じる。

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ドローン管制ロードマップ

UTMは四段階に分けて開発される (上の写真)。各モジュールはBuildと呼ばれ、Build 1からBuild 4まで開発される。Build 1は航空管制基礎機能で、上述の空域や航路を設定をする。悪天候では航路を閉鎖するなどの機能もある。運行スケジュール管理 (オペレーターは飛行計画を提出) やドローンの運行間隔調整 (上述) なども実装する。今年の夏にシステムをデモする計画だ。Build 4は上記に加え、ドローン監視や緊急事態対応 (墜落の際の回収計画など) などの機能を搭載し、2019年3月にデモすることを目指している。NASAはUTM開発を民間企業と共同で行い、希望する団体はプロジェクトに参加できる。現在、100以上の企業や大学が参加を表明しており、カンファレンスでは、Kopardekarがプロジェクトへの参加を呼びかけた。

FAAはドローン商用運用を積極的にサポート

FAAは一転して、ドローン商用運用を積極的にサポートする方向に進み始めた。今年5月、FAAはドローン商用運行ルールを策定するため、民間企業と共同プロジェクトを開始。これは「Pathfinder」と呼ばれ、CNN、PrecisionHawk、BNSF Railwayの三社と、ドローンを安全に商用運行する方式を検証する。CNNは市街地で、ドローンで安全にニュースビデオを撮影できるかを検証する。これは、オペレーターがドローンを見ながら操縦するモデルである。

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PrecisionHawkはドローン製造企業で、農業を中心にデータ収集と解析を行う (上の写真)。プロジェクトでは、農場の作物生育状況をドローンで観測する。このケースでは、ドローンはオペレーターの視野を離れ、自律的に飛行する。BNSF Railroadは北米第二位の鉄道貨物ネットワークで、ドローンを使って、鉄道施設の検査を行う。施設は広範囲に及び、ドローンはオペレータの視野を離れて飛行する。FAAはこれら三社を手始めに、商用ドローンの安全性を検証し、制定中の運用ルールに盛り込む計画だ。

商用ドローン運用に向けた法整備が進む

カンファレンスではFAA UAS Integration Office責任者Jim Williamsが、ドローン商用運行法制化について報告した。FAAは今年初頭に、ドローン商用運行に関する草案を公開し、パブリックコメントを募集。4000件以上の意見が集まったとされる。また、FAAは全米六か所にドローン試験サイトを開設し、運行試験を展開している。更に、FAAはドローンの商用運行を個別に審査し、特例措置 (「Section 333」と呼ばれる) として認めている。Williamsは、民間企業のSection 333に対する関心が極めて高く、1000件以上の申請を受領したとしている。この特例措置は昨年9月から始まったが、3月から審査プロセスを簡素化し、認可件数が急増している。

FAAが公開した草案では、オペレータはドローンを見ながら操作することが義務付けられている。長距離輸送など商用運行では、この条項が大きな障害となっていた。WilliamsはFAAはこの条項を緩和する方向で検討していることを明らかにした。カメラなどのセンサー技術が進んでおり、ドローンが安全に運航できることを確認すると、この条項を廃止するとしている。法令が制定されるまでに二年程度かかるとされているが、FAAがドローン商用運行に積極的な方向で進み始めた。

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ドローン商用運行については寛大な意見

米国ではドローンがホワイトハウスに墜落する事件をきっかけに、セキュリティーやプライバシーの議論が高まっている。先月はニューヨークで、ビルボードにドローンで赤色のスプレイを吹きかける事件が発生 (上の写真、顔の部分の横線など)。これに先立ち、旅客機とのニアミスや国立公園での墜落事故など、ドローンが社会問題となっている。米国では、個人が運用するドローンの規制を強化すべきとの意見が高まっている。

その一方で、ドローンの商用運行については、寛大な意見が多い。国民は米国がドローン製品で中国に先行されていることを理解し始めた。また、カナダやオーストラリアで、ドローンビジネスが重要な産業に育っていることも伝わり、米国が世界に取り残されているという危機感が広まっている。国防省やNASAを中心に、ドローン技術開発が積極的に進み始めた。連邦議会の圧力やドローン開発企業のロビー活動で、FAAは規制緩和に向かっている。米国政府がドローンのインキュベーターとしての役割を担いつつ、民間企業が商用化のチャンスを狙っている。国民の支持を背景に、ドローン技術開発が一気に加速しそうな勢いだ。

空の”自動運転車”「Matternet ONE」、Amazonより一足早くドローン配送を開始

Thursday, May 7th, 2015

ベンチャー企業「Matternet」がドローンを使った配送システムで覇権を狙っている。同社は既に新興国で、ドローン空輸ネットワークを展開し、実績を積んでいる。このシステムを米国や欧州など先進国で展開する。Matternetが開発したドローンは、自律飛行し目的地まで荷物を運ぶ。Amazonより一足先に、消費者に商品を空輸する、ドローン配送技術をレポートする。

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スマートドローン「Matternet ONE」

Matternetはシリコンバレーに拠点を置く新興企業で、ドローンを使った空輸ネットワークを開発している。このシステムは開発途上国で、医薬品の輸送などで使われてきた。Matternet共同創設者Andreas Raptopoulosは、カンファレンス「Drones, Data X Conference」で、次世代ドローン「Matternet ONE」を明らかにした。ドローンはオペレーターが操縦する必要は無く、自動運転車のように、目的地まで自律的に飛行する (上の写真、イメージ)。このようなインテリジェントなドローンは「Smart Drone」と呼ばれている。ドローンはEコマースのパイプラインとして、店舗間で商品を移動したり、顧客に商品を配送する役割を担う。

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クラウドに接続して飛行

Matternet ONE (上の写真) は配送専用に設計されたドローンで、都市部での配送を目的としている。重量1Kgまでの荷物を積み、20Kmの距離を飛行できる。Matternet ONEは、クラウド「Matternet CLOUD」と交信しながら飛行する。(通信方式の説明は無かったが、LTEなど携帯電話通信を利用すると思われる。) 飛行ルートは地形などを考慮して事前に設定する。FAA (米国連邦航空局) が定める飛行禁止区域 (飛行場周辺など) や構造物を避けて飛行する。クラウドはドローンの運行状態をモニターする。更に、飛行データはクラウドに収集され、運行後、それを解析し飛行に関する知見を得る。

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スマホの専用アプリで操作

Matternet ONEはスマホの専用アプリで操作する。まず、発送人は格納容器「Payload Box」に荷物を搭載し、離陸の準備をする。次に、スマホの専用アプリで目的地を入力する。Autoモードにすると、ドローンは自律的に、指定されたルートを飛行する。目的地では、「Landing Pad」に着陸する。Landing Padにはマーカーが表示され (上の写真、六角形の目印)、ドローンはカメラでこれを認識し、自律的に着陸する。受取人はPayload Boxを開けて荷物を受け取る手順となる。

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上の写真はドローン配送ルートの事例を示している。右側のドットを離陸し、白線に沿って飛行し、左側のドットに着陸する。赤色のシェイドはFAAが規定する飛行禁止区域 (空港近辺や市街地など) を示しており、ドローンはこの区域を避け、最短距離を飛行する。具体的な説明はなかったが、右側のドットはTesla Motorsの自動車工場で、左側のドットはMatternetのオフィスと思われる。つまり、工場から自動車部品を消費者に、緊急に配送するシナリオなどが考えられる。将来は航続距離を伸ばすため、バッテリー交換スポットの設置なども計画されている。ここで充電されたバッテリーを搭載し、ホップ・ステップで航続距離を伸ばす。現在、バッテリー交換は人手によるが、これを自動化することも検討されている。更に、他の飛行体との衝突回避システムや、GPSシグナルを受信できない時の対応技術などの開発も進められている。

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Eコマースのパイプライン

Matternetは、上述の通り、発展途上国で医薬品の輸送などを展開してきた。ブータンではWHO (世界保健機関) と共同で、中央病院から遠隔地の保健所に医薬品を空輸するミッションを展開 (上の写真)。パプアニューギニアでは、Doctors Without Borders (国境なき医師団)と共同で、医療支援に従事した。健康診断のため、血液検体などを病院の検査施設に空輸した。

これらの実績をベースに、Matternet ONEは先進国を対象に、Eコマースのパイプラインとして事業を展開する。Eコマースではファーストマイルとラストマイルが一番コストがかかるとされている。また、Eコマースでは配送パッケージの75%が1Kg以下の重量で、小型貨物の配送セグメントが急拡大している。更に、小型貨物では、ラストマイルの配送コストが、全体の70%を占めるとされ、ドローンの活躍が期待されている。

対象地域とビジネスモデル

Matternetはドローン配送事業を二段階で展開する。最初はアジアやアラブ圏の国々で、企業間取引を支えるインフラを目指す。これらの国々では経済発展に輸送インフラが追従できなく、交通渋滞が深刻な問題となっている。これをドローン配送で補完する。第二段階で米国におけるドローン空輸事業を展開する。Eコマースで購入した商品を消費者に届けるモデルを目指す。

Matternetのビジネスモデルはドローンのシステム販売。Matternetはドローン単体でなく、空輸システムを販売する。企業はMatternetからMatternet ONEを含むシステムを購入し、自社で運用する。提供するシステムは、Matternet ONEの他に、クラウド関連ソフトウェア (Matternet CLOUD) とスマホ向け専用アプリから構成される。Matternet ONEの価格は5000ドルからで、既に販売が始まっている。

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スイス郵便局と実証実験

Matternetは、Swiss Post (スイス郵便事業会社) とSwiss WorldCargo (スイス国際航空の貨物部門) と、Matternet ONEを使った空輸システムの実証試験を開始する (上の写真)。複数台のMatternet ONEを使い、今年の夏からスイスで始める。この試験ではコンセプトの検証を目的とし、本格展開につなげていく。検証事項はドローンの技術面やビジネス面だけでなく、法令順守や地域住民との関係が重要な要素となる。ドローン配送では、国の法令に沿った運用が求められるだけでなく、地域住民の安全性やプライバシーへの配慮がことのほか重要となる。

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ドローン配送市場が立ち上がる

この市場では、Amazonがサイトで購入した商品をドローンで配送するシステム「Amazon Prime Air」を開発している。Googleは「Project Wing」で、高速で長距離飛行できるドローンの開発を進めている。カンファレンスでRaptopoulosは、Matternet ONEは、AmazonやGoogleと競合するものの、ロジスティック・プロバイダー (配送サービス会社) に焦点を当てビジネスを展開することで、勝算はあると自信を見せた。(上の写真はカンファレンス会場で、スポーツアリーナの観客席で講演を聞いた。)

日本市場においてもMatternetのビジネスモデルは参考になる。企業は自前でドローン配送システムを備えておけば、自社内や他社にパーツやサンプルなどを緊急に空輸できる。宅配会社や郵便局などは、ドローン配送で他社に差別化できるプレミアム・サービスを提供できる。その前に、日本版Matternetの誕生も期待される。ドローン配送事業は既に始まっており、市場が急速に立ち上がる兆しを感じた。