Archive for April, 2018

米国大統領選挙はフェイクニュースで混乱、今年の中間選挙はAIを悪用したフェイクビデオが世論を操作する

Friday, April 20th, 2018

2016年の米国大統領選挙はFacebookを通じてフェイクニュースが拡散し社会が混乱した。この背後にはロシアの情報操作があり、フェイクニュースがトランプ大統領誕生の理由とまで言われる。2018年は米国中間選挙の年で、今年はAIを悪用したフェイクビデオが世論を操作すると懸念されている。

出典: BuzzFeed

フェイクビデオとは

フェイクビデオとは悪意を持って改造されたビデオで、AIが現実に存在しない映像をリアルに描き出す。実際に、オバマ前大統領が星条旗の前で演説しているフェイクビデオが登場した。オバマ前大統領は「誰でも好きなことが言える時代となった」と述べ、演説が始まる (上の写真、左側)。しかし、途中で「トランプ大統領は完全に無能な輩 (Dipshit)」と語り、自分の耳を疑った。オバマ前大統領のショッキングで下品な発言に驚いていると、映画監督で俳優であるJordan Peeleが登場した (上の写真、右側)。

意のままにスピーチさせる技法

実は、このビデオは改造されたもので、Peeleが喋っている通りにオバマ前大統領が喋っていることが分かった。ビデオ映像はリアルで、言葉通りにオバマ前大統領の唇が動いており、Peeleが登場するまでフェイクビデオとは分からなかった。ビデオの声はPeeleのものであるが、同氏はオバマ大統領の物まねが得意で、声でも見分けがつかなかった。この事例はオバマ前大統領のビデオを改造し、意のままにスピーチさせる技法で、重大な危険性を感じさせるビデオである。これはニュースサイトBuzzFeedとJordan Peeleが共同で制作したもので、フェイクビデオの危険性を啓もうする目的で作成された。

映画スターの顔を置き換える

フェイクビデオが社会問題になっているが、その技法は「DeepFake」と呼ばれている。DeepFakeはAIを使い、写真やビデオの中に登場する人物の顔を、別の顔と置き換える技法。置き換えられた顔はリアルで、偽造されたビデオだとは気が付かない。映画GoldfingerのSean Conneryの顔を人気俳優Nicolas Cageで置き換えたビデオが公開されている (下の写真、上段)。映画のシーン (下段左側) で、顔の部分だけをNicolas Cage (下段右側) で置き換えたもの。短いビデオとなっており、たばこにライターで火をつける一連の動きを見ることができる。

出典: Derpfakes (上段)、YouTube Movies (下段左)、Wikipedia (下段右)

トランプ大統領の顔を置き換える

トランプ大統領やプーチン大統領など、大物政治家がフェイクビデオの対象となっている。俳優Alec Baldwinはトランプ大統領の物まねで人気を得て、娯楽番組の政治風刺コメディで活躍している。トランプ大統領に扮するBaldwin (下の写真、左側) の顔を、DeepFakeの技法で、本物のトランプ大統領の顔と置き換えたビデオ (下の写真、右側) が話題となっている。ここでも、Baldwinが喋るとおりに、偽造されたトランプ大統領が喋る構成になっている。偽物の大統領は本物と見分けがつかず、フェイクビデオが悪用されるとその影響は甚大だ。

出典: Derpfakes

映画スターが被害にあう

DeepFakeが社会問題となり、その危険性が認識されたのは、あるポルノ映画が切っ掛けであった。ポルノ女優の顔を映画スターの顔で置き換えたフェイクビデオがネットに掲載され、社会に衝撃を与えた。映画Wonder Womanを演じたイスラエルの女優Gal Gadotの顔がポルノビデオの中で使われた。Gadotがポルノ映画に登場したと思われ、顔を置き換えることの危険性がはっきりと認識された。この他に、Emma Watson、Katy Perry、Taylor Swiftなどが被害にあった。

DeepFakeとは

DeepFakeはAIを組み込んだソフトウェアで、写真やビデオの中に登場する人物の顔を、別の顔と置き換える機能を持つ。基礎技術について論文が発表され、その成果が公開されている (下の写真)。

出典: Iryna Korshunova et al.

これはオリジナルの写真の顔 (最上段) を、Nicolas Cageの顔 (下から二段目) と Taylor Swiftの顔 (最下段) で置き換えたもの。その結果がそれぞれ、二段目と三段目に示されている。左端は女優Jennifer Anistonの顔を、Nicolas CageとTaylor Swiftで置き換えたもの。拡大して見ると、Anistonの眼、鼻、唇、眉毛、顔のしわなどが、CageとSwiftのものと置き換わっている。一方、顔の向き、視線、唇の表情、髪は元の顔を踏襲している。つまり、顔の表情はオリジナルのままで、各パーツが置き換わっていることが分かる。

Deep Learningの手法

DeepFakeはDeep Learningの手法で顔を学び、両者の顔を置き換える技法を習得する。具体的には、Convolutional Neural Networksが、元の顔と置き換える顔の特徴を学び、それらをスワップする。教育のために両者の顔写真を大量に入力し、アルゴリズムは顔と特徴と置き換えるプロセスを学習する (下の写真)。アプリはCUDA (Nvidiaの開発環境) で稼働し、プロセッサとしてNvidia GPUが必要となる。大規模な計算量が発生するが、パソコンにNvidiaグラフィックカードを搭載した構成で実行できる。ハリウッドの特撮を誰でも簡単に行える時代となった。

出典: Derpfakes

DeepFake制作者

顔を置き換えるアルゴリズムは学術テーマとして大学などで研究が進んでいる。DeepFakeは研究成果をソフトウェアの形で公開したもので、それが悪用され社会問題となってる。具体的には、ソーシャルニュースRedditのユーザ「derpfakes」により開発され、その成果 (上述のポルノ映画フェイクビデオ) がRedditに公開され、社会を驚かせた。その後、derpfakesはこのソフトウェアを公開し、誰でも利用できるようになった。更に、Redditの別のユーザ「fakeapp」が使いやすいツールを開発しGithubに公開したため、普及が一気に進んだ。

DeepFakeの問題点

DeepFakeを悪用すると、実物と見分けのつかないフェイクビデオを簡単に制作できる。トランプ大統領が北朝鮮を軍事攻撃したと発表するフェイクビデオを作ることができ、社会に与える影響は甚大である。既に、編集ツールAdobe Photoshopを使って写真やビデオが改ざんされている。DeepFakeの危険性はAIで、素人でも手軽にフェイクビデオを作れることだ。Photoshopでは専門家が手作業でビデオを改ざんするが、DeepFakeはこのプロセスを自動化し、フェイクビデオの危険性が現実のものとなった。

フェイクビデオ対策は難しい

大統領選挙ではFacebookを通してフェイクニュースが拡散したが、今年の中間選挙ではフェイクビデオが使われると懸念されている。これに対して、FacebookはAIでヘイトスピーチを検知すると表明したが、技術が完成するまでに5-10年かかる。他の企業もフェイクビデオを検知する技術の開発には数年を要するとみており、中間選挙では有効な手立てがないのが実情である。

自ら身を守る

そのため有権者や市民は自ら身を守ることが必要となる。ビデオを見るときは、全面的に信用するのではなく、疑ってみることがポイントとなる。直感的におかしいと感じる時は、別のソースで情報を確認するなど、自衛手段が必要となる。フェイクニュースの轍を踏まないように少し賢くなることが求められている。

Googleはドアベル「Nest Hello」を投入、高度なAIを搭載しセキュリティが格段に向上、今年はAI監視カメラがブレークする

Friday, April 13th, 2018

Googleのスマートホーム部門Nest LabsはAIドアベル「Hello Nest」の出荷を始めた。Helloはドアベルであるが、カメラを搭載しており、監視カメラとしても機能する。Helloは人の姿や物音で玄関に訪問者がいることを把握し、アラートをスマホアプリに送信する。実際に使ってみるとHelloはインテリジェントな監視カメラで、安心感が格段に向上した。

出典: Nest Labs

Helloを設置する

2018年3月からHelloの出荷が始まり、家に取り付けて利用している。Helloは現行のドアベルを置き換える形で設置される。給電のために直流16-24Vの配線が必要となり、使っているドアベルと互換性があることを確認する必要がある。実際の設置作業は、Nest Labsのフィールドエンジニア「Nest Pro」に依頼して実施した。30分くらいで工事が終わり、ドアの隣にHelloが取り付けられた (下の写真)。

ハードウェア構成

Helloは押し釦(下部の円形の部分) の他に、カメラ (上部の円形の部分)、マイク、スピーカーを搭載している。カメラのセンサーは3メガピクセルで、UXGA (Ultra Extended Graphics Array 、1600 x 1200) の縦長モードで録画される。夜間撮影のためにNight Visionとして赤外線LEDライトを備えている。カメラで撮影された映像は家庭のWiFi経由でNestクラウドに送られ格納される。

出典: VentureClef

Nestアプリから利用

Helloはスマホに専用アプリ「Nest」をダウンロードして利用する。アプリを起動するとHelloが撮影している映像をライブで見ることができる (下の写真、左側)。その他に、カメラが検知したイベント (人の動きなど) の一覧が表示される (下の写真、右側)。ここでクリップにタッチすると、録画されたビデオが再生される。この事例はHelloが玄関先で人の動きを検知したもので、訪問者や不審者を過去にさかのぼりビデオで見ることができる。

出典: VentureClef

訪問者があるとアラートを受け取る

使ってみて便利と感じるのは、Helloがイベントを検知すると、そのアラートをスマホで受け取れる機能。スマホのロック画面に「Someone’s at the door (玄関先に誰かいます)」などとメッセージを受信する (下の写真、左側)。そのメッセージをタップすると短いビデオクリップが再生され、誰がいるのかを見ることができる (下の写真、右側)。

出典: VentureClef

録画ビデオをレビュー

更に、ビデオクリップをタップするとアプリが開き、そのイベントを再生して見ることができる (下の写真)。このアラートは庭の手入れを依頼しているガーデナーに関するもので、玄関前を掃除している様子を確認できる (左側)。また、外出先でアラートを受け取り、訪問者を確認できる。Amazonで買い物をした商品の配達であることが分かり (右側)、必要に応じ、配達人とスピーカーを通して話をすることもできる。例えば、商品を玄関に置いてください、と指示することもできる。

出典: VentureClef

Google Homeが誰が来たのかを知らせる

Helloのカメラは訪問者の顔を識別することができる。家族や友人の顔をHelloに登録しておくと、これらの人物がドアベルを押すとその名前を把握する。更に、HelloをGoogle Homeと連携しておくと、AIスピーカーが訪問者の名前を告げる。「○○○ is at the front door (○○○さんが来ました)」などと音声で案内をするので、スマホを手に持っていなくても、家族全員が誰が来たのかが分かる。

ドアベルのインターフェイス

また、名前が登録されていない人が来たら、Google Homeは「Someone’s at the door (玄関先に誰か来ました)」と音声で案内をする。実際に使ってみると、チャイムのピンポーンという無機質な音ではなく、言葉で来客を告げられると温かみを感じる。ドアベルのチャイムが音声になるとマンマシン・インターフェイスが格段に向上する。

顔認識と名前の登録

このために、事前に顔を登録する作業が必要になる。一番最初に友人が訪問すると、Helloは「An unfamiliar face is at the door (登録されていない人が玄関にいる)」というメッセージを発信する。メッセージをタップしてビデオクリップを見ると友人が訪問してきたことが分かる。ここでNew People Seenというページで知人であることを指定し (下の写真、左側)、更に、Familiar Facesというページでその人の名前を入力する (下の写真、右側)。そうすると、Helloは顔写真と名前を結び付け、次回から、その友人が訪問してきたら、Google Homeはその名前を告げる。

出典: VentureClef

テレビで訪問者を見る

我が家で人気の機能はHelloのカメラが撮影する映像をテレビで見ることができる機能だ。これはGoogle Homeの機能を借用したもので、AIスピーカーに「OK Google, show me Nest Hello on my TV」と言葉で指示すると、玄関の様子をテレビの大画面でみることができる。スマホアプリを操作してビデオを見るよりはるかに便利で、スマートホームの必須機能となることは間違いない。

出典: VentureClef

クラウドサービス

録画したビデオを閲覧したり顔を認識する機能はクラウドサービス「Nest Aware」として提供される。Nest Awareは、撮影した映像をクラウドに格納し、後日、それを閲覧できる機能を提供する。イベントが発生すると、Nest Awareで録画された映像をレビューして、その原因を突き止めることができる。Nest Awareは有料のサービスで、ビデオ保存期間に応じて料金が変わる。最長で30日間分のビデオを保存でき、月額料金は30ドルとなる。また、Helloのハードウェア価格は229ドルとなっている。

問題点もある

Helloは登場したばかりの商品で、機能が成熟しているというわけではない。その一つがカメラ機能で、露出を調整できないことが問題となる。自宅のエントランス構造として、玄関部分が暗く背後が明るいため、カメラが捉える訪問者の顔がどうしても暗くなる。Nestに相談したが解決策はないとのことで、今後の機能改良を待つしかない。また、夜間に通りを走るクルマのヘッドライトが反射して、玄関先に差し込むことがある。Helloはこれを侵入者と誤検知しアラートを発信する。AIのアルゴリズムを改良し、画像認識で誤検知を抑制する対策も必要となる。

Googleとの統合

Googleは2014年1月にNestを買収し、その後Alphabet配下の子会社として運営してきた。2018年2月、NestはGoogleのハードウェア部門に統合されることとなった。この部門はGoogle Homeなどのハードウェア製品を開発しており、NestはAIスピーカーとの連携が密接になり、ユニークな機能の開発が進んでいる。今後、NestはGoogleが所有しているAI技法をフルに実装でき、高度なAI監視カメラが登場することになる。

今年はAI監視カメラがブレーク

Helloは今までのセキュリティカメラとは格段に使い勝手が良く、Google Homeとの連携も快適で、満足できる製品だと感じる。Helloを使い始めたが、安心感が格段に増大した。日々の生活で不審者が自宅を訪れることも多く、これからはドアを開ける前にビデオで確認できる。また何かあればスマホにアラートが届くので、即座に玄関先の様子を確認できる。自宅にいなくても遠隔で監視でき安心感が大きく増大する。今年はAIを監視カメラに適用したAI監視カメラがヒットする勢いを感じる。