Archive for September, 2018

AIがeスポーツにデビュー、5台のAIが5人の人間と戦闘ゲームで対戦

Friday, September 21st, 2018

AIは囲碁のチャンピオンを破り、次の目標をeスポーツに定め、開発が進んでいる。eスポーツとはビデオゲームを使った対戦で、スポーツのように試合が実況中継される。いまeスポーツファンの数が急増し、日本のプロ野球に匹敵する規模のビジネスとなっている。OpenAIは「Five」というAIを開発し、eスポーツのトップチームと対戦した。

出典: OpenAI

OpenAIとは

OpenAIとはAI研究の非営利団体で、Elon Muskらにより2015年に設立された。Muskらが10億ドルを拠出し、最初の数年間でその一部が使われる。OpenAIは他の研究機関と連携し、特許や研究結果を公開し、オープンな手法でAI開発を進めている。高度なAIが社会及ぼす危険性を回避するため、安全なAIを開発する。研究テーマの中心は深層強化学習(Deep Reinforcement Learning)で、安全なインテリジェンスの開発を目指す。

ゲームをプレーする「Five」

OpenAIはビデオゲーム「Dota 2」をプレーするAI「Five」を開発した。Dota 2とは、五人のチームが森の中で戦闘を繰り返し、陣取り争いをするゲーム (上の写真)。Fiveは五人の人間を五セットのAIで置き換え、AI同士が連携しながらプレーする。Fiveは国際ゲームイベントで人間のトップチームと対戦し好成績を収めた。

Dota2とは

Dota 2は米国Valve社が開発したビデオゲームで、MOBA(Multiplayer Online Battle Arena)に区分される。MOBAとは、チームメンバーがキャラクターを操作し、相手のチームと対戦する形式を指す。Dota2では、二つのチーム(「Radiant」と「Dire」)が対戦し、相手のタワー「Ancient」を崩壊させたほうが勝ちとなる。チームは五人で構成され、それぞれがキャラクター(Heroと呼ばれる、下の写真、その一部)を操作し、相手のキャラクターを攻撃する。対戦では戦略やチームプレーが求められ、AIにとって極めて複雑なゲームとなる。

eスポーツとは

Dota 2はeスポーツ(eSports)で最も人気のあるゲーム。eスポーツとはビデオゲームを使った対戦で、有名チームの試合が放映され、ファンがそれを観戦する構造となる。eスポーツファンの数が急増し、2018年には2億人を超え、2021年には3億人になると予想されている。eスポーツの収入は2018年は$905.6Mと予想され、巨大ビジネスとなっている。(ゲームの対戦をスポーツと呼ぶには違和感を感じる人も多いが、実際にプレーを見ると激しい格闘技で、デジタル時代のプロレスと言える。)

出典: Dota2 Wiki

The International

eスポーツの最高峰がDota 2のワールドカップともいえる「The International」(下の写真)。今年はカナダ・バンクーバーで開催され、18チームがトーナメント形式で対戦した。特設会場のステージで競技が行われ、ゲーム画面が大型モニターに映し出される。今年は、欧州チーム「OG」が中国チーム「PSG.LGD」を3対2で破り優勝。対戦の模様はYouTubeなどで中継され、観戦者数は6679万人に上った。これはゴルフ「Masters」の観戦者数に匹敵し、世界中で人気が広まっている。

Fiveの対戦結果

The Internationalという晴れの舞台で、Fiveはエグジビションゲームとして、プロチームと対戦した。Fiveはブラジルチーム「paiN Gaming」及び中国チーム「rOtK」と対戦したが、どちらも1対0で敗戦した。paiN Gamingとの対戦で、序盤は人間チームが優勢であったが、中盤はAIチームが形勢を逆転した。しかし、終盤で人間チームの戦略的な攻撃をうけ敗戦を期した。人間の技には及ばなかったが、対戦時間は51分と長く(平均は45分)、接戦の末の敗戦となった。

出典: Dota2 Wiki

Fiveの概要

Fiveはニューラルネットワーク(Long Short Term Memory、LSTM)で構成され、深層強化学習の手法で教育された。LSTMはRecurrent Neural Network方式のネットワークで、記憶機能があり、長期間にわたる相関関係を処理するのに適している。アルゴリズムはAI同士の対戦を通じて、Dota2のプレーの仕方を学習した。

ゲームをプレーする理由

OpenAIがDota 2をプレーするAIを開発する理由は、ゲーム環境が実社会によく似ているため。Dota 2は、森林の中で敵味方が入り乱れ、攻撃と防御を繰り返す。勝つためには作戦を立て、AI同士のチームワークが要求される。Fiveはゲームという仮想社会で技術を習得するが、ここで培った技法は実社会に応用できる。ロボットや自動運転車が家庭や街中で稼働するとき、Fiveで習得した技術が役に立つ。

囲碁の次はeスポーツ

Google DeepMindはAlphaGoで囲碁のチャンピオンを破り世界を驚かせた。囲碁は複雑なゲームであるが、Dota 2はそれよりはるかに複雑なゲームとなる。囲碁は150手ほどで勝敗が決まるが、Dota 2は2万手と長い。また、囲碁は正規化された空間でプレーするが、Dota2は人間社会を模したカオスな環境で実行される。囲碁を制したAIは、次はeスポーツでトップチームと対戦し、勝利することを目標に据えている。

Apple Watchが医療機器に進化、スマートウォッチで心臓疾患を検知

Friday, September 14th, 2018

Appleは2018年9月12日、特別イベント「Apple Special Event」で、iPhone XとApple Watchの新製品を発表した。第四世代となる「Apple Watch Series 4」は、ハードウェア機構が一新され、健康管理に重点を置くウエアラブルとなった。Apple Watch Series 4はECG (Electrocardiography、心電図) を計測するセンサーを搭載し、心臓の健康状態をモニターする。

出典: Apple

ECGとは

ECGとは心臓の鼓動を電気シグナルとして測定するもので、病院で心臓疾患を検査するために使われる。この機能がApple Watch Series 4に搭載され、家庭で心臓疾患を検知できるようになった。使い方はシンプルで、指をクラウン(Digital Crown)にあてると(下の写真)、アプリ「ECG」が起動し(上の写真、左側)、30秒で心電図を測定する(上の写真、右側)。測定結果は問題が無ければ「Sinus Rhythm」と表示される。もし、心房細動(不整脈の一種)が検知されると「Atrial Fibrillation」と示される。

出典: Apple

Apple Healthに記録される

測定結果はAppleの健康管理アプリ「Health」に格納される(下の写真)。検査結果の判定(Classifications)だけでなく、心電図の波形(Waveform)も記録される。更に、利用者はその時の症状を入力することができる。万が一、異常が検知されると、医師に相談することになるが、その際に、Healthに格納しているECG検査結果を示し、治療判断に役立てる。

出典: Apple

ECG計測のメカニズム

Apple Watch Series 4はECGを測定するために新しいハードウェア機構を搭載した。二つのモジュールから成り、ウォッチ背後に円形電極が付加され(下の写真、外側の円)、更に、クラウンがもう一つの電極として機能する(下の写真、左側の突起)。円形電極が皮膚に触れ、指をクラウンにあてることで、心臓を含む電気回路が作られる。この回路で心臓の鼓動の電気シグナルを計測する仕組みとなる。既にFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を受けており、Apple Watch Series 4を医療機器として使うことができる。

出典: Apple

心拍数の計測と心臓疾患検知

Apple Watchは発売当初から心拍数を測定する機能を提供しているが(下の写真、左側)、Series 4ではセンサーが一新され(上の写真、中央部緑色の部分)、新たな機能が加わった。Apple Watch Series 4は心拍数が異常に高い時、また低い時に、警告メッセージを表示する(下の写真、右側)。更に、上記ECGに加え、心拍数から心房細動を検知するアルゴリズムが搭載され、バックグランドで心臓の健康状態をモニターする。(詳細な説明はないが、心拍シグナルをニューラルネットワークで解析し、心房細動を検知すると思われる。ECGに比べ判定精度は低いが、Apple Watch Series 4を着装している時は、連続して心臓の状態をモニターできる。) センサーは緑色のLEDライトを皮膚に照射し、血管の伸縮や容積の変化を測定する。このデータを解析することで心拍数を把握する。エクササイズ時には心拍数から消費カロリー量を算定する。

出典: Apple

転倒検知機能

Apple Watch Series 4に利用者が転倒したことを検知する機能が付加された。転倒を検知するとディスプレイに緊急SOS(Emergency SOS)画面が表示され(下の写真、左側)、ボタンをスワイプすると電話が発信される(下の写真、右側)。転倒を検知して60秒間アクションが無い時は、利用者が危機的な状態にあると判断し、アプリが自動で電話を発信する。SOS電話の相手として、両親や配偶者などを事前に登録しておく。スノーボードで激しく転倒したときに、救助を求めるために使われる。また、一人暮らしの高齢者が転倒した時に、助けを求める機能としても使えそうだ。

出典: Apple

AliveCor

Apple Watch Series 4がECGを搭載したが、市場には既に多くの製品が販売されている。AliveCorというベンチャー企業は「Kardia Band」というECGモジュールを開発した。これをApple Watchに着装すると(下の写真、バンドの四角のデバイス)ECGを測定できる。このデバイスに指をあててECGを測定し、結果はApple Watchのディスプレイに表示される。Kardia BandがApple WatchでECGを測定できる最初のデバイスとなり、既にFDAの認可を取得し、医療機器として使われている。

出典: AliveCor

Cardiogram

Cardiogramというベンチャー企業は、Apple Watchで心臓疾患を検知するAIを開発した。カリフォルニア大学サンフランシスコ校との共同研究の成果で、Apple Watchで収集した心拍データをAIで解析し、不整脈の一種である心房細動を検知する。Apple Watch Series 4もこれと同じ方式で、心拍シグナルをAIで解析し、心房細動を検知するものと思われる。

健康管理プラットフォーム

Apple Watch Series 4に先立ち、ベンチャー企業で心臓疾患を検知する高度な技術が開発された。Appleはこれら先進技法を取り込み、消費者に使いやすいデザインで提供していることに特徴がある。更に、管理アプリHealthで健康管理をプラットフォームとして設計しており、病院など他のシステムとの連携が期待される。

Apple Watchは医療機器に

Apple Watchは、コミュニケーション(通信機能)、エクササイズ(運動量把握)、ヘルスケア(健康管理)の三つの基軸機能を持っている。Apple Watch Series 4でECG機能が搭載され、ヘルスケア機能が大幅にに向上した。Apple Watchはバイオセンサーとして、身体情報をモニターする医療機器としての役割が鮮明になった。Apple Watchは血圧や血糖値を測定する機構を搭載するとのうわさが絶えず、次は何が登場するのか、スマートウォッチが大きく進化している。