次世代のスマートグリッド (Green:Net 2011より)

サンフランシスコで開催されたGreen:Net 2011では、カンファレンスを通して、次世代のスマートグリッドのあるべき姿が議論された。アメリカにおいてスマートグリッドのインフラが整備される中、いま求められているのは、スマートグリッドのユーザー・アプリケーションである、というのが議論の結論であった。

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Pacific Gas and Electricの事例

アメリカ国内において、スマートグリッドの施設が進んでおり、利用者が実際にその機能を使って、消費電力を把握できるようになってきた。北カリフォルニアにおいても、各家庭にスマートメーターの設置が進み、その利便性を体験できるようになった。同時に、スマートメーターに不足している機能も明らかになってきた。北カリフォルニアにおいては、サンフランシスコに拠点を置く、Pacific Gas and Electric (PG&E) が、電気とガスを配給している。PG&Eは、2009年から、電気とガスのスマートメーターの設置を開始し、2012年末までに1000万個を設置する予定である。2011年3月時点では、770万個の設置が完了し、作業は順調に進んでいる。ここMountain Viewでは、2010年12月に、スマートメーターの設置が行なわれ、家庭で使用している電力とガスの状況を詳細にモニターできるようになった。上の写真 (出展:VentureClef) は、設置されたスマートメーター (電気用) である。デバイスはGeneral Electric社製で、内部に無線通信機構を持っており、測定したデータを近くのアクセスポイントに送信する。このネットワーク関連機器を提供しているのが、Silver Spring Networksという大手ベンチャー企業である。システム・インテグレーションは、IBMなどが手掛けている。PG&Eが設置しているスマートメーターは、このGeneral Electric社製と、Landis+Gyr (ランディス・ギア) 社製の二種類がある。

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これにより、我々利用者は、PG&Eのウェブサイト (My SmartMeterという名称) で、家庭で消費した電力・ガスの状況を監視することができるようになった。Usage Historyで、電力・ガスの月毎の使用量、使用料金、一日の平均気温、一日あたりの使用量等、過去のデータを閲覧できる。Hourly / Daily Usage (上のグラフィックス、出展:VentureClef) では、時間毎、日毎の電力消費量と料金を見ることができ、家庭における電力消費パターンを理解することができる。

Demand Response

スマートメーター設置に伴い、柔軟な価格体系が導入された。これから夏場に向かう中で、ピーク時の電力消費を抑制する、価格政策が施行されている。これは、Summer Pricing Planと命名され、夏場 (6月から9月) の間、電力需給に応じて、特別価格を設定している。この期間、利用者は、電力需給が逼迫すると予想される日 (SmartDayと呼んでいる) の前日に、PG&Eから、アラートを受信する。SmartDayでは、ピーク時間帯 (14時から19時) に、電力を使用すると課徴金が課される仕組みである。課徴金は、基準価格の部分で、$0.60/kWh (48円/kWh) である。基準価格は$0.12/kWh (9.7円/kWh) 程度であるので、5倍の料金を支払うことになる。この代わりに、利用者は、SmartDay以外の日には、基準価格で、$0.02992/kWh (2.4円/kWh) 程度の値引き (25%の値引率) を受けることになる。Summer Pricing Planには、任意で加入でき、参加者はピーク時には省エネに勤め、節電と供に料金が安くなることを目指す。このように、電力会社の電力供給量に応じて、消費者が電力消費量を調整する方式を、Demand Responseと呼んでいる。現在は、機械化されていないマニュアル方式であるが、今年の夏からのスタートとなる。

スマートメーターの将来計画

スマートメーターが導入されて、消費者は、電力・ガスの消費量をリアルタイムで監視でき、省エネのための大きな一歩となった。一方で、マニュアル方式のDemand Responseでは、上述の通り、利用者の能動的な関与がないと節電が実現できない。これを、機械化して、消費者への負担無しに、エネルギー管理を行うというのが、PG&Eが示しているロードマップである。PG&Eが設置したスマートメーターは、利用者の家庭でのネットワーク (Home Area Network (HAN)) と、無線で交信できる機能を既に搭載している。スマートメーターとHANを結ぶことで、電力・ガスの使用量を、家庭に設置しているディスプレーに表示できる。また、スマートメーターを空調サーモスタットと連動 (下の写真、出展:Xcel Energy) させると、上述のDemand Responseを機械化でき、SmartDayには、自動で温度設定を変更できる。他に、スマート家電との連動を計画しており、家全体で省エネ・システムが出来上がる。

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トレンド

日本は、電力配信網が近代的で、スマートグリッドを導入するインセンティブは少ない。また、日本は、電力供給量が充分で、スマートメーターを設置して、節電を行う必要性は薄かった。しかし、福島原子力発電所事故を受けて、夏場には電力需給が逼迫してくる。更に、浜岡原子力発電所の停止や、エネルギー政策見直しに伴い、節電のためのシステムが喫緊の課題になっている。スマートグリッドの導入には、時間と費用がかかり、今年や来年の節電対策とはならないが、中期レンジでのエネルギー管理システムとして、再考する時期に差し掛かっている。スマートグリッドは、情報通信技術を統合したシステムであり、日本のIT企業にとって、実力を発揮できる場でもある。いま多くのベンチャー企業が、上述のキラーアプリを開発しており、大きく動きそうな市場でもある。

2 Responses to “次世代のスマートグリッド (Green:Net 2011より)”

  1. 北川 弘文 says:

    はじめまして。

    スマートグリッドの将来性に関して興味を持つ、一個人です。

    いま、スマートメータ(一般家庭用)の価格を調べていますが、それが出ているデータが見当たらず困っています。

    もしよろしければ、このブログで紹介されているスマートメーターの単価がいくらか教えていただけますでしょうか?

    勝手なお願いで恐縮ですがどうかよろしくお願いいたします。

  2. 北川様

    宮本と申します。コメント有り難うございます。スマートメーターの価格ですが、このケース(Pacific Gas & Electricという電気ガス会社の場合)ですと、226ドルとなります。この価格はプロジェクト全体のスマートメーターの費用をスマートメーターの台数で割ったもので、平均して、スマートメーター1台の費用は226ドルということになります。

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