インテリジェントな自動車

Googleは、このところ、急速に事業分野を広げており、以前レポートした通り、クレジットカードやクリーン・エネルギー発電事業に参入している。Googleの新事業のもう一つの柱は自動車で、Fordと共同で、インテリジェントな自動車の開発を進めている。また、スタンフォード大学と共同で、自動運転技術の開発にチャレンジしている。

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クラウドに接続された自動車

Fordは、サンフランシスコで開催された、開発者向けのカンファレンスであるGoogle I/O 2011で、自動車をクラウドに接続する技術を公開した。具体的には、Google Prediction APIという、クラウドを利用する仕組みを、自動車に適用する研究成果を発表した。Google Prediction APIとは、クラウド機能を利用するためのインターフェイスで、利用者はこのAPIを利用して、知的なアプリケーションを開発することができる。Google Prediction APIは、機械学習により、過去のデータを学び、ルールを把握する機能を提供する。この機能を使うことで、スパム・フィルターを作成したり、文章から要点を抽出したり、また、利用者の嗜好を把握して音楽の推奨を行なうアプリケーションを、簡単に開発できるようになった。Fordは、このGoogle Prediction APIに、自動車からアクセスして、運転者の挙動を学習して、最適な運転ルートを提案するシステムを開発している。この研究はFord Researchで進行中で、同研究所のRyan McGee (ライアン・マギー) がその概要を紹介した。実際の応用分野としては、自動車をクラウドに接続して、リアルタイムで渋滞情報や天気情報などを入手し、個人に特化した運転情報を提供することである。具体的には、プラグイン・ハイブリッド車をクラウドに接続し、ガソリン走行と電気走行の最適化を行なう計画である。この機能が搭載される車種は、Ford C-Max Energi (シーマックス・エナジー、プラグイン・ハイブリッド車、上の写真、出展:Ford Motor Co.) で、出荷は2011年秋の予定である。

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プラグイン・ハイブリッド車への適用事例

McGeeは、利用者がこの機能を使うシーンとして、火曜日の午後5時に、会社で仕事を終えて、自動車に乗るところを紹介した。自動車に乗ると、自動車が音声で、「これから家に帰るのですか?」と問いかける。これに対して利用者は、「そうです」と、声で返答すると、自動車は、「帰り道にEV Zoneがあるが、そのためにバッテリーを確保しておきますか?」と問いかける。利用者は、「それで行こう」と回答する。このシーンに登場するEV Zone (上の地図の緑色の部分、出展:Ford Research) とは、二酸化炭素排出量が少ない電気自動車だけが走れる区域で、今後、アメリカにおいて導入が計画されている。上述のシーンでは、自動車は、利用者の行動を把握しており、平日の午後5時に搭乗すると、高い確率で、自宅に向かうと判断した。自動車は目的地を確認したあと、会社から自宅までの、最適なルートを計算し、その途中に、EV Zoneがあることを把握する。EV Zoneでは、ハイブリッド車は電気走行する必要があるため、バッテリーに充分電気を蓄えておく必要があり、通常の道路ではガソリン走行を行なうという判断をした。この意思決定のプロセスにおいて、Google Prediction APIが使われている。このように、これからは自動車と利用者が、音声でのやり取りを通して、自動車が走行ルートを決定し、最適な運転方式を設定することになる。

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自動走行技術

Googleは、Fordのプロジェクトとは別に、自動車の自動走行技術を開発している。Googleは、スタンフォード大学のSebastian Thrun (セバスチャン・スラン) 教授と共同で、自動走行技術の開発を進めている。San Mateo (カリフォルニア州) で開催されたMaker Faire (メーカー・フェアー、手作り機会の展示会) において、Thrun教授がこのプロジェクトについて、ビデオを交えて紹介した。自動車は、Prius (上の写真、出展:Google) をベースとしており、屋根の上にLIDAR (レーザー光による距離測定センサー) を搭載しており、距離を測定し、車両の周りの3Dマップを作成する。また、車両の前と後ろにレーダーを搭載し、前後の物体との距離を測定し、位置を把握する。フロントグラスにはビデオ・カメラが設置され、信号や移動物 (自転車や歩行者など) を検知する。屋根にはGPSが搭載されていて、位置情報を把握し、左後部車輪にPosition Estimatorが搭載され、短距離の移動を測定し、正確な位置を特定する。

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自動車がこれらのセンサーを使って認識する道路の様子は、上の写真 (出展:VentureClef) の通りである。自動車は、交差点の赤信号で止まり、信号が青になって左折をするが、横断歩道で歩行者を認識し、その手前で止まっている様子である。Thrun教授によると、この技術は実用化までには時間がかかるが、交通事故を無くし、道路を有効利用できるとしている。

トレンド

このところ、Googleの本業である検索エンジンでは、画期的な技術が登場していないが、研究プロジェクトは活発に動いている。自動車においては、省エネがキーワードで、環境に優しい技術開発が進んでいる。Googleは変化を続けており、検索企業から、次の機軸事業を模索して苦悶している。同時に、新たにCEOに就任したLarry Pageの言葉を借りれば、Googleは、株主からの圧力に抗して、技術革新の灯をともし続けている。

One Response to “インテリジェントな自動車”

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