お洒落だけど革新的でない?Apple Watchの狙いを読み解く

Appleは、3月9日、サンフランシスコで、Spring Forwardと題した発表イベントで、Apple Watch詳細情報を発表した。改めて、Apple Watchは洒落なスマートウォッチで、ハイエンドモデル「Watch Edition」は息をのむほど美しい (下の写真)。一方、Apple Watchで生活がどう便利になるか、分かりづらいという意見もある。Apple Watchの機能は革新的でないとの評価もあるが、発表されたアプリを子細に検証すると、別の姿が見えてくる。

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パートナー企業が開発したアプリ

発表イベントで、CEOのTim Cookが、Apple Watchについて詳細情報を公表した。機能については、驚くような情報は無かったが、パートナー企業が開発したアプリについては、新鮮な情報が揃っていた。技術担当副社長Kevin Lynchが、Apple Watchを使って、これらアプリをデモし、新しい使い方を示した。アプリを子細に見ていくと、Apple Watchの狙いが浮き上がる。

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おサイフケータイ付き腕時計

Apple Watchでおサイフケータイ機能「Apple Pay」が使えることが大きなアドバンテージとなりそうだ。店舗で買い物をし、サイドボタンをダブルクリックし、リーダーにかざすだけで支払がいできる (上の写真、左側)。ポケットからスマホを取り出す必要は無く、腕時計で支払いができるのは、圧倒的に便利。セキュリティーに関しては、Apple Watchを着装する際に、四桁のPINを入力して本人確認をする。Apple Watchを外すとログオフした状態となり、他人が支払いをすることはできない。リーダーとはNFC (Near Field Communication) 方式で交信する。筆者は、スターバックスでリストバンド「Microsoft Band」で支払いをしているが、この方式はヒットの予兆を感じる。

ホテルのルームキーとなる

Apple Watchをホテルのルームキーとして使える。これはホテルチェーン「Starwood Hotels & Resorts」が開発したアプリで、Apple Watchがルームキーとなる (上の写真、右側)。ホテルに到着するとアプリでチェックインし、そのまま部屋に向う。アプリには「Room Number 237」などと、部屋番号が表示される。部屋のドアにApple Watchをかざすと鍵がアンロックされる。このケースもドアの鍵とはNFC方式で交信する。ホテルカウンターで長い行列に並ぶ必要は無く、スマートにチェックインできる。ホテル側としても、業務の効率化に役立つ。

駐車場で料金を支払う

Apple Watchで駐車料金を支払うことができる。パーキング・メーターにApple Watchかざすと、駐車場のスロット番号が自動で入力され、登録しているクレジットカードで支払いができる。これは「PayByPhone Parking」というアプリで、パーキング・メーターとはNFC方式で通信する。アプリは駐車時間終了10分前にメッセージを表示する。時間までに戻れそうにない時は、アプリで追加料金を払い時間を延長できる。

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自動販売機で料金を支払う

NFC方式での支払いは駐車場だけでなく、自動販売機にも広がっている。Coca-Colaは、今年末までに、北米でApple Payに対応した自動販売機を10万台導入するとしている。iPhoneをかざすだけで、清涼飲料水を購入できる (上の写真)。今回の発表イベントでは、Apple Watchで同じ処理ができることを明らかにした。日本ではSuicaを使って自動販売機で支払いをするのは普通の生活だが、米国でもApple Payの影響力でこの流れが始まった。Apple Watchの登場で、ポケットからスマホを取り出す代わりに、腕時計で買い物する方式が注目されている。

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スマートホームを操作する

スマートホームとウエアラブルの連携がトレンドとなっている。Apple Watchとスマートホームが連動するアプリが登場した。上の写真左側は、スマート・サーモスタット「Honeywell Lyric」と連動するアプリ。時計のディスプレイで「外出中」や「就寝」ボタンを押すと、空調が省エネモードとなる。利用者が自宅から遠いところにいると、アプリはメッセージで確認したのち、「旅行」モードで運転する。サーモスタットはApple Watchで利用者の位置を把握し、帰宅すると室内が最適な温度になっている。

上の写真右側は、スマートホーム機器「Lutron」と連動するアプリで、家庭内の電燈をApple Watchで操作する。ソファに座ったままで、「映画モード」を選択すると、室内の照明が落ちる。寝室で「就寝モード」を選択して家全体を消灯する。家を離れている時も操作でき、防犯のため、夜間に電燈を点けることもできる。電燈を点けたまま外出すると、アプリが消すかどうかを尋ねる。

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大型店舗で買い物をする

Apple Watchが買い物の手助けをする。これは大型店舗「Target」が開発したアプリで、買いたい商品の売り場に近づくと、アプリがそれを教えてくれる。事前にiPhoneで買い物リストを作っておき、店舗ではその売り場に近づくと、Apple Watchにメッセージが表示される (上の写真左側、スポーツ用品売り場で自転車を表示)。アプリは消費者の場所を把握し、売り場に関連する買い物リストを表示する。これ以上の説明は無いが、店舗にBluetoothビーコン「 iBeacon」を備えておけば、ピンポイントで消費者の位置を把握できる。スマホにメッセージが表示されるのとは異なり、腕時計を見ながらの買い物は便利に違いない。

定番のランニングアプリ

ウエアラブルの必須アプリはランニング管理。上の写真右側は「Nike+ Running」で、アプリがランニングの走行距離、時間、ペースなどを表示する。iPhoneとペアで利用し、走りながらApple Watchで途中経過を確認できる。ランニング中に友人から応援メッセージが届くと、それをApple Watchで閲覧できる。ヘッドセットとBluetoothで繋ぐと、走りながら音楽を聞ける。ランニングが終わるとアクティビティーのサマリーを表示する。取り立てて新しい機能は無いが、ウエアラブルで一番人気のアプリ。

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Bring Your Own Wearable (BYOW)

早くもApple Watchを仕事に活用するアイディアが登場した。上の写真左側は、米国の先進医療機関「Mayo Clinic」が開発した、医師向けのアプリ。アプリは忙しい医師のスケジュールを管理する。医師はApple Watchを見て、患者がロビーで待っているのか、検査を終えたのかなどを把握する。診察する際には、アプリで患者の年齢、性別、体重などを閲覧し、お洒落に情報にアクセスする。BYOD (Bring Your Own Device) の次は、BYOWが話題になっている。

上の写真右側は、コントラクターが仕事をした時間を管理し、請求書を発行するアプリ「Invoice2go」。コントラクターは、Apple Watchをして仕事場に到着すると、アプリはそれを把握。職場はGeofencing機能で定義され、Apple Watchがその中に入ると、仕事をしているとみなされ、働いた時間を記録する。コントラクターはこの情報を元に、請求書を発行する。支払いを受領すると、アプリが知らせてくれる。

登場しなっかたアプリ

発表イベントでは新しいアプリが数多く紹介されたが、期待に反し登場しなかったアプリもある。これはデジタルヘルス関連で、Apple Watchは、血圧、心電図、皮膚の電気伝導率 (ストレスの度合いを測定)、血中酸素濃度を測定する機能を搭載すると噂されていた。しかし、昨年9月の発表でこれら機能は公表されず、Apple Watchはデジタルヘルスから大きく路線を転換したことが明らかになった。今回もこの路線を踏襲し、高度なデジタルヘルス機能は登場しなかった。これら重要な機能が欠落したままのApple Watchは考えにくく、将来製品に順次搭載されることを期待している。

今まで述べてきたアプリに共通しているのは、Apple WatchがNFCやBluetoothなどでネットワークに繋がり、センサーの役割を果たしていること。Internet of Thingsとして機能し、バックグランドで必要なデータを送受信し、利用者に便利な機能を提供している。Apple Watchが、クレジットカードやドアの鍵となり、リアル社会のツールとして使われる。Apple Watchは、情報表示端末ではなく、Internet of Thingsのセンサーとして捉えれば、製品の狙いが分かり易い。将来は、上述の通り、Apple Watchが身体情報をモニターするバイオ・センサーとしての役割が期待されている。

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お洒落にITを楽しむのがニューノーマル

Appleは製品発表に先立ちPRを展開してきた。上の写真は女性雑誌「Vogue」三月号で、中折の部分に12ページにわたり、Apple Watchのコマーシャルが掲載された。ドレスやバッグと並び、Apple Watchがファッションアイテムとして位置づけられている。Apple Watchのテレビコマーシャルも始まった。お洒落なApple Watchで、秒針が時を刻むように、その機能を次から次へと紹介した。プライムタイムで女性を対象に、ファッション性を前面に押し出したコマーシャルだった。お洒落にITを楽しむのがニューノーマルであるとのメッセージを感じた。

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