Appleの人工知能戦略、SiriはiOS 10でボイスクラウドに進化

Appleは2016年9月13日、iPhone向け基本ソフトiOS 10をリリースした。早速使ってみたが、Siriが大きく成長する兆しを感じた。Siriの機能が一般に公開され、企業は音声で操作するアプリを作ることができる。SiriはもはやOS機能ではなく、ボイスクラウドとして位置づけられる。AIで足踏みをしているAppleが巻き返しに転じた。

メッセージングが劇的に機能アップ

iOS 10を使って驚いたのはメッセージング「Messages」の機能が飛躍的に向上したこと。絵文字やマルチメディアが使えるだけではなく、画面いっぱいのアニメーションが目を引く。お祝いメッセージの背後で紙吹雪が舞い散る (上の写真左側)。沢山の風船が舞い上がり、夜空に大輪の花火が上がるシーンもある。文字も大文字でジャンプしながら表示され、インパクトのあるメッセージを送ることができる。Apple Watchで登場した心臓が鼓動するアニメーションやキスマーク (上の写真右側) が使え、メッセージが格段にカラフルになった。Messengerはお洒落でハイセンスでAppleらしい製品に仕上がっている。ヒットすること間違いない。

メッセージングに若者が集う

ここにはFacebook MessengerやSnapchatに対抗するAppleの姿勢がうかがえる。ソーシャルメディアは伸び悩み、若者はメッセージングに集っている。ここが人気スポットで、生活の基盤であり、買い物をする場所でもある。ビジネスとして大きな可能性を秘め、Appleが全力でキャッチアップしている姿勢が見て取れる。

オープンなプラットフォーム

iOS 10の最も重要なポイントはプラットフォームが広範囲にわたり公開されたこと。音声アシスタントSiriはApple製アプリだけで使われてきたが、iOS 10ではサードパーティが開発したアプリから利用できる。企業はSiriの機能を組み込んだアプリを開発できるようになり、ユーザインターフェイスが格段に向上した。音声操作のアプリが勢いを増す中で、Siriを組み込んだボイスアプリのエコシステムが広がっている。

写真を言葉で検索する

Apple製アプリについてもSiriがカバーする範囲が広がった。特に便利なのは写真アプリ「Photos」を言葉で操作できる機能。「Show my photos from airports」と言えば空港で撮影した写真を表示する (下の写真左側)。旅行で撮影した写真を探すときは「Find my pictures from my trip to San Francisco」と言うと、サンフランシスコで撮影した写真を表示する (下の写真右側)。Deep Learningでイメージ検索技術が格段に向上し、質問に対しズバリ結果を表示する。使ってみてとても便利と感じる。

電車の乗り換えを教えてくれる

Siriは電車の路線案内ができるようになった。現在地からサンフランシスコ空港に行くには「Give me public transit directions to San Francisco Airport」と言えば、バスと電車を乗り継いで空港に行く経路を示す (下の写真左側)。また、クルマの中で目的地までの道順を尋ねるときは「Give me directions to San Jose Airport」と指示する。ナビゲーションが始まるので、それに沿って運転する。

Appleのスマートホーム

iOS 10からスマートホームアプリ「Home」が登場した (下の写真)。このアプリがハブとなり開発キット「HomeKit」で定義された家電を操作する。Siriに「Turn on the living light」と言えばリビングルームの電灯が灯る。Homeでは家の中の雰囲気を設定する「Scene」という機能がある (下の写真左側、中央部)。Siriに「Set my movie scene」といえば、テレビで映画を見るために最適な暗さになる。電灯の輝度が落ちうす暗くなる。

また、Automationという機能を使うと、家の中の家電を自動制御できる (下の写真右側)。家の中が暗くなったら自動で電灯が点灯する。「At Sunset」という機能を使うと日没時に電灯がオンとなる。また、「When I Arrive Home」という機能を使うと、自宅に到着すると部屋の電灯が灯る。シンプルな機能だが電灯が自動でオンオフするのは便利と感じる。

Siriでクルマを呼ぶ

iOS 10の最大の特徴はパートナー企業がSiriの機能を組み込んだアプリを開発できること。企業はSiri開発キットである「SiriKit」でアプリを開発する。SiriKitで開発されたアプリはSiriの機能を実装し、利用者が音声でアプリを操作できる。

ライドシェア「Lyft」はSiriKitでアプリを開発した。Siriに「Get me a ride to San Francisco Airport」というとLyftのクルマを呼ぶことができる (下の写真左側)。Siriの画面にLyftアプリのウインドウが表示され、近所にいるLyftのクルマがマップ上に表示される。Siriはクルマは7分で来ますが呼びますかと尋ねる。これにYesと答えるとクルマが配車される。ライドシェアではLyftの他にUberも使える。

Siriでお金を送る

Siriから送金することができる。「Send money with Venmo」と指示すると、無料の送金アプリ「Venmo」の送金プロセスが起動する (下の写真左側)。Siriは誰に送るのか、また、金額と添えるメッセージを聞いてくるので、これらに応えると確認画面が表示される (下の写真右側)。ここで「Yes」と答えると送金が完了する。Venmoの他に「Square Cash」で送金することもできる。

Siriからメッセージを送り電話をかける

Siriからメッセージアプリ「WhatsApp」を起動しメッセージを送信できる。「Send a WhatsApp message to Alice..」と指示する (下の写真左側)。また、ソーシャルネットワーク「LinkedIn」で友人にメッセージを送信できる。「Send a LinkedIn message to John..」と指示する (下の写真右側)。この他にSiriから「Skype」や「Vonage」を使って電話をかけることができる。

Apple WatchからSiriを利用すると便利

SiriはApple Watchからも利用できる (下の写真左側)。家の中や外出先では、iPhoneを取り出す代わりにApple WatchでSiriを使うのが便利。Apple Watchに「Hey Siri, Set my movie scene」と語り掛けタスクを実行する (下の写真右側)。iPhoneでも「Hey Siri、」と呼び掛けてSiriを起動できるが、その際はiPhoneを電源に接続しておく必要がある。

SiriKitで音声アプリを開発

前述の通り、SiriKitは開発者向けのツールで、これを利用してSiriの音声機能を組み込んだアプリを開発する。SiriKitは業務領域「Domain」ごとに提供される。DomainはVoIP calling、Messaging、Payments、Photo、Workouts、Ride bookingなどから構成される。SiriKitがユーザとのやり取り全てを担う。音声認識や自然言語解析などのAI機能はSiriKitが提供する。ただし、開発者は業務に固有の言葉を登録し、Siriのボキャブラリーを増やす必要がある。

Siriは輝きを取り戻すか

新しくなったSiriを使うと利用できるシーンが増えてとても便利になったと感じる。同時に、Siriの音声認識精度についてフラストレーションを感じることも少なくない。GoogleやAmazonと比べるとその差が歴然としてきた。iOS 10からはSiriの機能が公開され、ボイスクラウドに進化した。この基盤上でクールなアプリが登場しようとしている。AIに対して及び腰であったAppleであるが、Open Siriで機能アップが期待される。最初にSiriを使った時の驚きは鮮明で、SiriKitはこの輝きを取り戻す切っ掛けになるのかもしれない。

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