NvidiaとAudiは2020年までに完全自動運転車を投入、Deep Learning AIがクルマを運転する

NvidiaとAudiは2020年までに完全自動運転車を投入すると発表した。Nvidiaの自動運転技術がベースとなり、Deep Learning (深層学習) がドライブテクニックを学びクルマを運転する。Nvidiaはこれを「AI Car」と呼び人工知能がクルマのドライバーとなる。

出典: Nvidia

NvidiaとAudiは完全自動運転車を開発

Nvidia CEOのJen-Hsun Huangは、2017年1月5日、ラスベガスで開催された家電ショーCESで最新の自動運転技術を発表した。この模様はビデオで公開された。この中でNvidiaはAudiと共同で完全自動運転車を開発し、2020年までに市場に投入することを明らかにした。クルマはAI Carと呼ばれ、Deep Learningが自動運転技術を司る。AIをフルに実装した自動運転車が市販モデルとして登場する。

自動運転車開発モジュール

Nvidiaはグラフィック半導体メーカーであるが、今ではAI企業として事業を展開している。Nvidiaは自動運転車向けのプロセッサや開発環境を提供している。自動運転を司るモジュールは「AI Auto-Pilot」と呼ばれDeep Learningが実装されている。他に、Nvidiaはドライバーの運転を支援するモジュールを明らかにした。これは「AI Co-Pilot」と呼ばれ、文字通りAIが副操縦士になりドライバーの運転をチェックする。これらのモジュールは車載AIスパコン「Drive PX 」で高速に処理される。

Auto-Pilotが操縦士となる

自分で運転したことのないクルマに運転技術を教えるのは非常に難しい。しかし、Deep Learningがドライブテクニックを学ぶことで自動運転技術が大きく前進した。Auto-PilotはDeep Learningの手法でクルマの周りのオブジェクト (クルマや歩行者など) を認識する。更に、それらの意味を把握して、Auto-Pilotは周囲の車両などがどう動くかを予想する。これによりクルマは安全なルートを選択して走行することができる。Auto-Pilotが操縦士となりクルマを運転する。

自動運転のメカニズム

Auto-Pilotはクルマに搭載されているカメラやLidarの画像を読み込み、それを解析してステアリングを操作する。具体的には、クルマは走行中に目の前のイメージと高精度マップ「HD Map」を比較して、位置を確認し、その意味を把握し、次に取るべきアクションを決定する。HD MapがGround Truth (規準) となり、クルマはこれを頼りに走行する。(下の写真はHD MapでLocalization (位置決定) をしている様子。クルマはセンチメートル単位で現在地を決定し、安全に走行できる車線を把握する。)

出典: Nvidia

HD Mapが必要となる

このために高精度マップHD Mapを事前に整備しておく必要がある。HD Mapとは道路や道路標識などが高精度で表示されたマップを指す。更に、マップ上のオブジェクトにはそれが何かを示す意味情報が付加されている。作成されたHD Mapはクラウドに格納される。

Deep Learningで自動運転アルゴリズムを教育

自動運転アルゴリズムはDeep Learningで教育される。カメラで捉えた画像とドライバーのステアリング操作が手本となり、Deep Learningを構成するニューラルネットワークはこれを学習する。Auto-Pilotは運転アルゴリズムをプログラミングされているわけではなく、人間のようにドライバーの運転を見てテクニックを学んでいく。データ入力から出力までをDeep Learningで処理する構成でAI Carと呼ばれる所以である。

コンセプトカーのデモ走行

Nvidiaはこれに先立ちAuto-Pilotを搭載した自動運転車「BB8」を発表している。CESではBB8デモ走行がビデオで紹介された (下の写真)。BB8はAI Carで最新の自動運転技術を搭載している。ドライバーとクルマのインターフェイスはタブレットで音声などで操作する。緊急事態に備えてストップボタンが装備されている。

出典: Nvidia

目的地までのルートを表示

クルマに乗ると音声で行き先を告げる。例えば「take me to starbucks in san mateo」などと指示する。クルマは指示に従って目的地までのルートを算出しタブレットに表示する (下の写真)。詳しい説明はなかったが、自動運転できる箇所は緑色で示される。自動運転できない箇所もマップ上に示され、ここはドライバーがマニュアルで運転することになる。HD Mapが整備されていない道路や運転が難しい地域が対象となる。いわゆる”圏外”の道路で、自動運転車の性能は自動走行できる範囲の広さが決定的に重要な要素になる。

出典: Nvidia

道路標識に従って走行

BB8は道路標識や車両を認識し自動走行する (下の写真)。一時停止の交差点や信号機のある交差点では、交通ルールに従って運転する。BB8はカーブの大きさ応じて速度を調整する。きついカーブでは速度を落として進行する。高速道路へのアプローチでは加速し、走行車線にスムーズに合流する。高速道路では自動で車線を変更し、高速道路を自動で降りることができる。BB8は道路という概念を把握しているので、車線がペイントされていない道路や砂利道でも自律走行できる。

出典: Nvidia

無事目的地に到着

自動運転からマニュアルモードに切り替えるときは「disengage autopilot」と指示する。市街地ではBB8はマニュアル運転で走行し、無事に目的地のスターバックスに到着した。走行した場所はシリコンバレーの住宅地と高速道路で、自動運転車にとっては比較的走りやすい環境。Auto-Pilotはこのレベルの運転テクニックを習得していることが伺える。今後は市街地や悪天候など運転が難しい環境での学習に進むことになる。

CES会場でのデモ

NvidiaはCES会場でAuto-Pilotのデモ走行を実施した。会場の一角に円周コースが設けられBB8が無人で走行した。また、Audi Q7ベースの自動運転車のデモ走行も行われた (下の写真)。クルマにはAuto-Pilotが搭載され、コースを周回した。シンプルなデモであるが、Nvidiaはクルマの教育は数日で終了したと述べ、Deep Learningを使うと学習速度が早いことをアピールした。

出典: Nvidia

ドライバーの運転支援技法

この他にNvidiaはドライバーの運転を支援する技法「AI Co-Pilot」を明らかにした。クルマに搭載されているAIは自動運転だけでなく、ドライバーの安全運転を支援する。クルマに搭載したカメラの画像を解析し危険な状況をキャッチする。例えば、前方を自転車が走っているとAI Co-Pilotは「右前方45フィートに自転車あり」と音声で注意メッセージを流す (下の写真)。ここではオブジェクトの判定や、それを言葉に置き換える技術が使われているが、これらはAIの得意分野である。

ドライバーの運転状態監視

車内にもカメラが備え付けてあり、AI Co-Pilotはその画像を解析して運転を支援する。AI Co-Pilotは顔認識機能がありドライバーを認証する。クルマは搭乗したドライバーの好みの設定になり、始動のためのキーは不要となる。この他に「Head Tracking」と「Gaze Tracking」機能がありドライバーの身体状態を把握する。例えば、疲れていると判定した時はクルマを止めるようアドバイスする。Auto-PilotがあればCo-Pilotは不要とも思えるが、Nvidiaは自動運転車が市販されてもマニュアルモードでの運転が残り、ドライバー支援技術は必須との見かたを示している。

出典: Nvidia

Lip Reading技術を採用

この他にCo-Pilotは音声認識機能を備えている。ドライバーが喋った言葉ではなく、唇の動きから何が語られたかを把握する。これは「Lip Reading」と呼ばれ、唇の動きから何を話しているかを判定する。騒音が大きい車内では音声認識機能ではなくLip Readingが有効な技法となる。これはOxford Universityが開発した「Lip Net」という技術を使っている。Lip Netの認識精度は95%で人間の精度53%を大きく上回る。Lip NetはAlphabet DeepMindと共同で研究を進めており将来が期待される技術である。

自動運転を構成するモジュール

Nvidiaは自動運転車開発のための包括的なシステムを提供する。オンボードプロセッサが「Drive PX」 (下の写真) で、ここにはAIスパコンチップ「Xavier」が搭載されている (銀色のモジュール)。Xavierは8コアのARM64 CPUで、512コアのVolta GPUを搭載し、毎秒30兆回の計算ができる。ここで基本ソフト「DriveWorks」が稼働し、Auto-PilotとCo-Pilotが実行される。ドライバーの言葉を理解する技術は「NLU」というモジュールで提供される。更に、クラウド経由でAI仮想アシスタントを使うことができる。Googleの仮想アシスタント「Assistant」をクルマから使う計画を進めている。

出典: Nvidia

自動車メーカーやサプライヤーとの提携

前述の通りNvidiaはAudiと自動運転車を共同開発する。更に、Mercedes-Benzとの事業提携も発表した。また、大手サプライヤーZFと自動運転システム「ZF ProAI」の共同開発を進めることを明らかにした。そして、大手サプライヤーBoschと自動運転技術を共同開発することを発表。NvidiaのオンボードプロセッサDrive PXとBoschのレーダーやセンサーを組み合わせて自動運転技術を開発する。

HD Map開発でトップ企業と提携

NvidiaはHD Map開発でも事業提携を拡大している。マップ技術で世界のトップを走るHEREはNvidiaとHD Mapの共同開発を進める。HEREはNvidiaが提供するマップ開発モジュール「MapWorks」を使って高機能マップ「HERE HD Live Map」を開発する。また、Nvidiaはゼンリンとの提携を発表した。ゼンリンはDrive PXとDriveWorksを使い日本でHD Mapを作成する。中国においてはNvidiaはBaiduと提携しHD Mapの開発を進めている。中国が自動運転車の巨大市場になり、そのためにHD Mapの開発が欠かせない。今年のCESではNvidiaの事業提携発表が相次いだ。

AI Carの課題と期待

NvidiaのAI Auto-Pilotはコンセプト段階であったが、Audiとの提携で一気に製品化に向かうことになる。Deep Learningをフルに実装した自動運転車としてその先進性に注目が集まっている。一方、AIが人間に代わりクルマを安全に操縦するためには解決すべき課題も少なくない。Deep Learningはアルゴリズムがブラックボックスで、クルマが下した判断を人間が理解するのが難しいという課題を抱えている。アルゴリズムを可視化する技術やそれを修正する技法が必要となる。果たしてAIをフル実装した市販車の開発は可能なのか、その取り組みに注目が集まっている。

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