AIがeスポーツにデビュー、5台のAIが5人の人間と戦闘ゲームで対戦

AIは囲碁のチャンピオンを破り、次の目標をeスポーツに定め、開発が進んでいる。eスポーツとはビデオゲームを使った対戦で、スポーツのように試合が実況中継される。いまeスポーツファンの数が急増し、日本のプロ野球に匹敵する規模のビジネスとなっている。OpenAIは「Five」というAIを開発し、eスポーツのトップチームと対戦した。

出典: OpenAI

OpenAIとは

OpenAIとはAI研究の非営利団体で、Elon Muskらにより2015年に設立された。Muskらが10億ドルを拠出し、最初の数年間でその一部が使われる。OpenAIは他の研究機関と連携し、特許や研究結果を公開し、オープンな手法でAI開発を進めている。高度なAIが社会及ぼす危険性を回避するため、安全なAIを開発する。研究テーマの中心は深層強化学習(Deep Reinforcement Learning)で、安全なインテリジェンスの開発を目指す。

ゲームをプレーする「Five」

OpenAIはビデオゲーム「Dota 2」をプレーするAI「Five」を開発した。Dota 2とは、五人のチームが森の中で戦闘を繰り返し、陣取り争いをするゲーム (上の写真)。Fiveは五人の人間を五セットのAIで置き換え、AI同士が連携しながらプレーする。Fiveは国際ゲームイベントで人間のトップチームと対戦し好成績を収めた。

Dota2とは

Dota 2は米国Valve社が開発したビデオゲームで、MOBA(Multiplayer Online Battle Arena)に区分される。MOBAとは、チームメンバーがキャラクターを操作し、相手のチームと対戦する形式を指す。Dota2では、二つのチーム(「Radiant」と「Dire」)が対戦し、相手のタワー「Ancient」を崩壊させたほうが勝ちとなる。チームは五人で構成され、それぞれがキャラクター(Heroと呼ばれる、下の写真、その一部)を操作し、相手のキャラクターを攻撃する。対戦では戦略やチームプレーが求められ、AIにとって極めて複雑なゲームとなる。

eスポーツとは

Dota 2はeスポーツ(eSports)で最も人気のあるゲーム。eスポーツとはビデオゲームを使った対戦で、有名チームの試合が放映され、ファンがそれを観戦する構造となる。eスポーツファンの数が急増し、2018年には2億人を超え、2021年には3億人になると予想されている。eスポーツの収入は2018年は$905.6Mと予想され、巨大ビジネスとなっている。(ゲームの対戦をスポーツと呼ぶには違和感を感じる人も多いが、実際にプレーを見ると激しい格闘技で、デジタル時代のプロレスと言える。)

出典: Dota2 Wiki

The International

eスポーツの最高峰がDota 2のワールドカップともいえる「The International」(下の写真)。今年はカナダ・バンクーバーで開催され、18チームがトーナメント形式で対戦した。特設会場のステージで競技が行われ、ゲーム画面が大型モニターに映し出される。今年は、欧州チーム「OG」が中国チーム「PSG.LGD」を3対2で破り優勝。対戦の模様はYouTubeなどで中継され、観戦者数は6679万人に上った。これはゴルフ「Masters」の観戦者数に匹敵し、世界中で人気が広まっている。

Fiveの対戦結果

The Internationalという晴れの舞台で、Fiveはエグジビションゲームとして、プロチームと対戦した。Fiveはブラジルチーム「paiN Gaming」及び中国チーム「rOtK」と対戦したが、どちらも1対0で敗戦した。paiN Gamingとの対戦で、序盤は人間チームが優勢であったが、中盤はAIチームが形勢を逆転した。しかし、終盤で人間チームの戦略的な攻撃をうけ敗戦を期した。人間の技には及ばなかったが、対戦時間は51分と長く(平均は45分)、接戦の末の敗戦となった。

出典: Dota2 Wiki

Fiveの概要

Fiveはニューラルネットワーク(Long Short Term Memory、LSTM)で構成され、深層強化学習の手法で教育された。LSTMはRecurrent Neural Network方式のネットワークで、記憶機能があり、長期間にわたる相関関係を処理するのに適している。アルゴリズムはAI同士の対戦を通じて、Dota2のプレーの仕方を学習した。

ゲームをプレーする理由

OpenAIがDota 2をプレーするAIを開発する理由は、ゲーム環境が実社会によく似ているため。Dota 2は、森林の中で敵味方が入り乱れ、攻撃と防御を繰り返す。勝つためには作戦を立て、AI同士のチームワークが要求される。Fiveはゲームという仮想社会で技術を習得するが、ここで培った技法は実社会に応用できる。ロボットや自動運転車が家庭や街中で稼働するとき、Fiveで習得した技術が役に立つ。

囲碁の次はeスポーツ

Google DeepMindはAlphaGoで囲碁のチャンピオンを破り世界を驚かせた。囲碁は複雑なゲームであるが、Dota 2はそれよりはるかに複雑なゲームとなる。囲碁は150手ほどで勝敗が決まるが、Dota 2は2万手と長い。また、囲碁は正規化された空間でプレーするが、Dota2は人間社会を模したカオスな環境で実行される。囲碁を制したAIは、次はeスポーツでトップチームと対戦し、勝利することを目標に据えている。

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