電力会社の省エネ技術と政策 (Green:Net 09より)

カリフォルニア州サンフランシスコで開催された、「Green:Net 09」 (グリーンネット 09) では、「Power Grid 2.0」というパネル・ディスカッションにおいて、Pacific Gas and Electric Company (通称PG&E) などが、スマート・グリッドの最新動向について議論を展開した。このレポートでは、この議論を参考に、PG&Eの省エネ技術とその背後にある政策について報告する。

 

PG&Eのオンライン・サービス

PG&Eは北カリフォルニアに電気とガスを供給している会社であり、ここシリコンバレーでは馴染みの深い会社である。PG&Eは、消費者に対して、ウェブ上で各種機能をオンラインで提供している。利用者はPG&Eのサイトで会員登録して、このサービスを使うことができる。このサービスは、単に「My Account」という名称で、月毎の電気・ガス使用量や使用料金を閲覧することができる。My Accountでは、利用者に最適な省エネの方法を紹介するサービスも提供している。

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家庭で使っている電化製品などの情報を入力すると、使用分野毎の電気ガス使用状況を表示してくれる。(上のスクリーンショット右側、出展はいずれもPG&E) この使用状況に対して、どうすれば節約できるかを「Saving Opportunities」としてリストしてくれる。(上のスクリーンショット左側) 室内照明で、白熱灯を蛍光ランプに取り替えると、年間120ドルの節約ができるなどとアドバイスをしてくれる。シンプルな機能であるが、スマート・メーターが設置される前に、利用者は基礎情報にアクセスすることができる。

 

PG&Eのスマート・グリッド

PG&Eは、既に、2006年からスマート・メーターの設置作業を開始している。PG&Eは、2011年までに、電気とガスのスマート・メーター980万個の設置を完了するとしている。ここMountain Viewでは、今年12月から工事が始まり、来年11月に設置が完了する予定である。

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電気向けスマート・メーターの外観は上の写真のとおりで、既存のアナログ・メーターをそっくり置き換える形になる。スマート・メーターは、時間ごとの電力使用量を計測し、一日に一回そのデータをPG&Eのセンターに送信する。スマート・メーターで計測されたデータは、まず、近くの電柱等に設置されているリレー (次の写真) に送信され、アクセス・ポイント経由で、最終的にPG&Eのセンターに送信される。スマート・メーターとリレーとアクセス・ポイント間で、ワイアレス・メッシュが構成され、どこかのパスで障害が発生した際は、自動的に別のパスでデータが送信される仕組みとなる。アクセス・ポイントとセンターの間は携帯電話などの公衆ネットワークを使って送信する。

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PG&Eにこれらの技術を提供しているのが、Silver Spring Networksという、カリフォルニア州レッドウッド・シティーに拠点を置くベンチャー企業である。Silver Springは、累計投資金額が$150Mという、大型ベンチャー企業で、PG&Eをはじめ多くの電力会社に製品を供給している。スマート・メーター市場で一番注目を集めている企業である。

 

PG&Eのエネルギー政策

PG&Eは、エネルギー政策で試行錯誤を繰り返しながら、現在は、再生可能エネルギー開発やスマート・グリッドの設置を、積極的に展開している。PG&Eは、1905年に、サンフランシスコで創業した、歴史のある会社である。PG&Eは、第二次世界大戦終戦後から、発電所の建設を大規模に行なってきた。しかし、1990年代の半ばに制定された、電力市場規制緩和で、その多くの発電施設を民間企業に売却した。PG&Eは、自ら発電するのではなく、Enronなど民間企業から電力を購入し、それを消費者に配電する企業となった。

しかしこのモデルは上手く機能しなくて、2000年頃から、カリフォルニアで電力不足が顕著になってきた。これは、Enronなどの電力供給会社が、電力供給量を意図的に制限したためだといわれている。Enronなどの価格操作で、PG&Eなど電力会社は、高い値段で電力を調達し、それを従来どおりの固定価格で消費者に配給した。このため、PG&Eは経営が行き詰まり、2001年には米連邦破産法11章の適用を行なった。その後カリフォルニア州政府の財政支援で、PG&Eは2004年に破産法から復帰した。

 

エネルギー政策の失敗と再挑戦

カリフォルニア州が採用した電力市場規制緩和政策は失敗で、PG&Eは自ら発電所を所有する形態に復帰しつつある。更に、PG&Eは、増え続ける電力需要や環境問題に如何に対応するかが、長年の課題である。PG&Eは、大量の設備投資で、クリーン・エネルギー開発とスマート・グリッドの建設を積極的に展開している。しかしその結果、利用者の省エネが進むと、PG&Eの電力販売量が減少し、業績の悪化につながることになる。この問題を解決するために、カリフォルニア州は、Decoupling (ディカプリング) というエネルギー政策を取っている。Decouplingとは、電力販売量と電力会社業績の関連を切り離すというアイディアである。省エネが進み、電力会社の電力販売量が減少すると、電力会社にインセンティブを与えるという仕組みである。このインセンティブは、電力販売単価を上げることで、収益を上げる仕組みである。単価上昇率は数パーセント程度であるが、これは消費者にも一定の負担を求める方式である。PG&Eのスマート・グリッドという新技術と、Decouplingという新政策が、今度はうまく行くのか、利用者としても気になるところである。

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