BeOSとHaiku (OSCON 2009より)

カリフォルニア州サンノゼで開催されたOpen Source Convention の展示会場には、大手IT企業を筆頭に、数多くのオープンソース企業がブースを出展していた。その中で、カラフルなロゴが目立つHaiku (ハイク) という企業のブースで、Haiku User Group of Northern CaliforniaのJorge Mare (ホルヘ・マレー) に、製品概要やその背景について話を聞くことができた。 (下はHaikuデスクトップ、出展: Haiku Inc.)

g118a_haiku 

 

Haiku誕生の歴史 

Mareは、Haikuとは、BeOS (Be Operating System) のオープンソース版である、と説明してくれた。更に、BeOSとは、Be Inc.により開発された、パソコン向けのOSであると、その背景を説明してくれた。BeOSは、Jean-Louis Gassée (ジャン・ルイ・ガセー) の指揮の下に、開発された製品である。Gasséeは、Appleにおいて、McIntosh開発責任者として、製品開発を行なっていたが、Appleを退き、1991年に、Be Inc.を創設した。Be Inc.は、独自仕様のパソコンであるBeBoxを開発し、BeOSはBeBox向けのOSとして開発された。BeBoxには、AT&Tが開発したHobbitというプロセッサーが搭載された。BeBoxは、二千台程度しか売れなくて、ビジネスは芳しくなかった。

 

その後、BeOSはPowerPCに移植され、特に、Apple向けPowerPCプラットフォームに移植された。その当時Appleは、古くなったMac OSを改良するプロジェクト (Copland Project) を進めていた。しかし、Appleは、自社で独自にOSを書き換える方式を中止して、第三者のOSを採用することとした。そこで候補に挙がったのが、このBeOSと、Appleを出たSteve Jobsが開発していたNeXT (ネクスト) であった。最終的にNeXTが採用され、これを機会に、JobsがAppleに復帰する話は、有名である。

 

BeOSのその後 

Be Inc.は、次に、BeOSをx86プラットフォームへ移植を行い、Microsoft Windowsの代替OSとして事業を展開したが、これも大きな成功を収めることができなかった。このため、BeOSは、OSのコアの部分だけを抜き出したBeOS Personal Editionを無償で提供することとした。BeOSを、WindowsやLinuxと供に使えるようにして、利用者層の拡大を図った。更に、BeOSをインターネット・アクセスのための組込み型OSとした、BeOS for Internet Appliancesを開発した。Be Inc.は、2001年に、Palm Incに買収され、その名前が消えることとなった。その後、 Palmから分社したPalmSourceが、BeOSの技術を継承した。PalmSourceは、その後、日本のACCESSに買収され、現在は、BeOSの技術はACCESSが所有している。

 

Haikuという企業 

BeOSは、事業としては成功しなかったが、その技術は高く評価され、多くのソフトウェアが開発されてきた。BeOSが市場から消え、サポートが停止された現在では、これらの資産が宙に浮いたままの状態となっている。このため、オープンソース・コミュニティーは、再びBeOSを復活させるプロジェクトを、2001年に開始した。これはOpenBeOSとよばれ、オープンソースの手法で、BeOSと互換性のあるOSを、一から開発するプロジェクトである。OpenBeOSプロジェクトは、2004年に、Haikuという名称に変更され、現在に至っている。

g118b_haiku 

Mareによると、Haikuという名前にしたのは、システムのエラー・メッセージが、日本の俳句の形式で表示されるためである。英語圏においても俳句への感心は高く、英語で俳句が作られている。実際にHaikuが表示するエラー・メッセージについて、Mareから実例をもらった。(上のグラフィックス、出展: Haiku, Inc.)  どちらも、リクエストがあったウェブサイトが見つからないというエラー・メッセージである。メッセージは、三行で構成され、Spring Rain (春雨) のように、季語 (Season Word) を含んでいる。上段は、「夢破れてサイト無し…」となり、「404 Not Found」と言われるより、情緒がある。

 

Haikuプロジェクトの状況 

Mareは、Haikuプロジェクトは、ボランティアによる開発と外部からの寄付金に依存していると説明した。プロジェクトの成果はオープンソースとして公開されており、誰でもMIT/BSDライセンスで、自由に利用できる。Mareによると、Haikuの特徴は、Linuxやデスクトップ環境を利用していなくて、すべてゼロから開発していることである。これは、Haikuを統一したコンセプトで開発するためで、コードの集合体であるLinuxは、趣旨に沿っていないので採用していないとしている。市場にはWindowsやLinuxがあるのに、何故この時期に、OSを開発するのかと質問すると、Mareは、「to create a compact and efficient operating system that specifically targets personal computing」 (パソコン向けにコンパクトで効率的なOSを造るため) と応えてくれた。過去のしがらみに囚われず、技術的に優れたOSを開発するため、と解釈できる。Haikuのブースでは、モニター上にHaikuのデスクトップが表示され、プレ・アルファ版が稼動していた。

 

考察

Be Incが創設されたとき、出資者の一人が、スーパーコンピュータ設計者であるSeymour Cray (セイモアー・クレイ) である。世界最高速のコンピュータの設計者が、Be Inc.の将来性を高く評価している。この理由について、Mareは、Be Inc.の社内ニュース・アーカイブ[1]を示してくれた。Crayの着眼点を一言で纏めると、処理速度を左右するメモリー性能について、カスタムCPUよりマイクロプロセッサーを評価し、そこでOSを開発しているBe Inc.の将来に賭けた、ということになる。BeOSとCrayは、マイクロプロセッサー上でWindowsが覇権を握りつつある時に、あえて挑戦を挑んだことになる。そして、現在、WindowsやLinuxが地位を固めた時に、Haikuは、それにあえて挑んで、技術的に秀でたOSを目指している。オープンソースのカンファレンスで、時代を超えて、開発者の普遍的なチャレンジ精神に、接することができた。

 


[1] Seymour Cray , http://www.haiku-os.org/legacy-docs/benewsletter/Issue1-44.html

One Response to “BeOSとHaiku (OSCON 2009より)”

  1. HaikuBot says:

    Good topic.

    Haiku ROCKS!

Leave a Reply

You must be logged in to post a comment.